口先だけの人は簡単に人を裏切る
夫が仕事に出ている間、なんの前触れも無しに、妻が子供を連れて家出をしてしまった。
その後、夫は妻から子供との面会を拒否され、離婚調停を申し立てられた。
夫はこれらの行為を、妻による「子の連れ去り」として非難している。
調停の場で夫は、離婚拒否と子供との面会権を主張。
子供を一方的に連れ去られたことで精神的苦痛を受けたとして、
妻に対して慰謝料を請求し、妻が求めてきた婚姻費用の支払いを拒否するとした。
しかし、調停での審判結果は、
夫に対し「婚姻費用を支払え」「慰謝料は却下」「子の面談は却下」という審判が下った。
定額収入があるから婚姻費用を盗られると考えた夫は、会社を辞めて足のつかない現金収入の仕事をし始める。
夫は会社に勤務していたとき、
毎月の給料日になると同僚に「今月も婚姻費用を支払いさせられる」と、恨み言を言っていた。
それを聞いていた同僚は「自分の子供の養育費なのに、何を言っているんだ」と醒めた目でみていたとのこと。
会社を辞めた夫は、無収入だから婚姻費用は一円も払えないと、支払いをボイコットしている。
夫曰く、ボイコットは正当性があり、
勝手に子供を連れて離婚する妻に非があるのだから、自分が支払う義務はないとのこと。
それでも未だに離婚拒否、子供の親権は自分が取るとのことで、離婚裁判へ移行し、係争継続中である。
「子の連れ去り」が全てそうであるとは言わない。
とりわけ「妻が悪い」「妻が勝手に連れ去ったのだから取り返す」「妻は犯罪者だ」と、
夫が大きな声をあげて批判している事例の裏側にあるものは何かを、しっかり見極める必要性はあるだろう。
心がある親ならば、他責志向ではなく自分を内省できる親ならば、
なぜ相手がそこまでのリスクを負って行動したのかを見ることができるはず。
妻だってそんなリスクは負いたくないはずだから。
穏やかに幸せに暮らしていたかったはずだから。
何より、子を巡って両親が諍いし続けることで、
子供が負う精神的負担を鑑みれば、取り合いはできないはずだから。
親とは、子を「所有」するのではなく、どこにいてもどんな形でも、子を慈しみバックアップすること。
そのために相手とは、どのような関係性になっても、良好な形を取り続けるよう努力するものではないのか。
無理やりにでも傍に取り置いて愛でようとするのは、ただの自己満足であり、ただの愛玩具に過ぎない。