■ご相談
「モラハラから逃げたい私はダメな人間なのかな」
結婚前は、あんなに優しかった夫が、結婚後驚くほどに人が変わってしまいました。
マッチングアプリで知り合った私たちですが、
夫は初対面のときから私をたくさん褒めてくれて、たくさん優しくしてくれて、
私のことを運命の人だと言ってくれて。
私の親や友人にも気を遣ってくれて、周りからの評判はとても良く、
誰一人彼に対して否定的なことを言う人はいませんでした。
何もかも私中心に考えて行動してくれる彼に、私や友人たちは、
彼のことを「白馬の王子様」と呼んでいたくらいです。
ただひとつ気になっていたことといえば、彼の友人や家族の影がひとつもなかったこと。
彼は友人より私が居てくれたら十分だと言い、
家族は海外で気ままに生活していて、それぞれ干渉しない主義だと説明されていたのです。
気になってはいましたが、彼が積極的に動いてくれたので、結婚まで順調に進んでいきました。
今思うと、事前に彼の家族を紹介されなかった時点で、
結婚は思い留まるべきだったと後悔していますが、それも後の祭りですね。
そして、結婚してすぐ同居したのですが、同居した途端、驚くべき夫の姿を見せつけられました。
靴の脱ぎ方から揃え方、テレビのリモコンの置き方や、
皿の洗い方、洗濯物の畳み方など、生活の一挙手一投足全てにルールを作って、
有無を言わさず押し付けてきたのです。
それまでは、私の部屋で半同棲のような時間があっても、
そんな素振りは一切見えなかったので、別人にすり替わったのかと思うくらい、
驚いて困惑してしまいました。
そしてスマホから男性の名前の登録を全て消され、
スマホの中身は毎日チェックされ、退勤して自宅到着まで10分でも遅れようものなら、
鬼のような着信が入るようになりました。
女の友人とも気軽に会えなくなり、彼の知らない話があるだけで浮気を疑われるようになり、
私の友人とも疎遠になってしまいました。
最初は新婚すぐなこともあって我慢をしていましたが、
彼の支配的な言動に耐えられなくなり反抗すると、彼は間接的な暴力をするようになりました。
私に対して直接暴力は振るいませんが、物を壊したり、ドアを強く閉めて大きな音をたてたり、
一切口をきいてくれないという完全無視を数日に渡ってされるようになります。
無視をされるほうが楽だと思い、私からも話さずにいると、
いきなり「お前が悪いのに無視をするな!」と私を責めてくるのです。
私は何が悪かったのか分からなかったため、夫に理由を問うと「自分で考えろ」と言われ、
分からないと返すと怒鳴られてバカにされます。
そんな生活が一年に及び、もう限界だと思い、私の方から離婚を切り出しました。
すると、彼は激高して「有責者からの離婚は認められない」
「結婚してやった恩を忘れたのか」と叫んで家具を壊して回るので、
近所から通報されて警察沙汰になってしまいました。
警察が来ると彼は人が変わったように大人しくなり
「妻がワガママを言うので我慢が出来なかった」「僕が我慢するのでもう大丈夫」などと説明し、
警察も民事不介入といって帰っていきました。
夫のあまりの変貌ぶりとショックで、私は警察に真実を話す余裕すらなく、
ただ嵐が収まるのを待つしかありませんでした。
嵐が収まると夫は私に必ずこう言いました
「君は僕の言う通りにして、ただ笑ってそこにいればいいんだよ」
「君が悪かったのだから反省してね」
すると、翌日から無視も収まり、夫の荒い言動もなくなるので、
やはり私が悪かったのだと、もっと夫に気を遣わなければいけないと思い込んでしまいました。
そんなやり取りが何度も続くと、私はダメな人間なのだと、
夫を怒らせる私は価値のない人間なのだと考えるようになりました。
仕事でも自信がなくなり、人間関係も自信がなくなり、ますます夫無しでは不安になっていきました。
最初は夫の方が私に依存していると思っていたのですが、
すっかり逆転してしまい、今では私は夫無しでは生きる自信が持てません。
結婚する前は、積極的で明るい性格で、友人も多く活発だった私ですが、
今ではすっかり真逆な性格になってしまいました。
自宅と会社の往復だけで、趣味や好きなことを考える余裕すらなくなってしまいました。
今の自分は本当の私ではありませんし、自分を好きになれませんし、
最低な人間だと感じて辛い毎日です。
こんな自分を変えるには、夫と離れるしかないと思いますが、
夫が怖くて自分に自信を持てない私は、その方法が分かりませんし、
かといって一人になるのは怖いし、もうどうしたらよいか分かりません。
■回答
「危険な人から離れたいと考えられただけで
大きな一歩」
信じて一緒になった夫に人格から否定され、モラハラをされ続けても、
頑張って維持しようと我慢してきた気持ちはよく分かります。
ダメな人間という刷り込みをし、あなたを思う通りに支配し、
離れられなくさせようとしている夫は、そうすることでしかコミュニケーションを築けない、
気の毒な人間とも言えます。
付き合い始めたら豹変する、結婚したら豹変するというパターンは、モラハラ者の典型的な常套手段です。
故意にやっているというよりも、そのようなコミュニケーション手段しか持っていないとも言えるでしょう。
三つ子の魂百までということわざにある通り、この手の人間の人格は改まることはありません。
なぜなら彼らは、自分には悪いところがないという前提であり、
これが正しいコミュニケーションだという理解で人生を送ってきたからです。
逆にモラハラ者の人格を改めようと働きかけると、
自尊心を傷つけられたと、逆鱗に触れてとんでもない仕返しをされますから要注意です。
そのような人格だと見抜けなかった自分を責める前に、
兆候を感じた時点で素早く物理的距離を取ることが必要です。
彼らは自分の間違いを認められませんし、無理に認めさせられると人格崩壊を招きますので、
その人格もひとつの個性であり、自分とは合わなかったと諦めて線を引くほうが、
お互いの幸せにつながるでしょう。
間違っても相手を救ってあげようとか、間違いを正そうなどと思わないことが重要で、
決して押し付けはせず相手の個性は尊重してあげることがポイントです。
そもそも、モラハラ者を始めの段階で見抜くのはとても難しいと思います。
モラハラ者は無意識的に、相手を利用して自分の立場を誇示しようとする傾向があるからです。
モラハラ者は自己愛者とイコールであり、彼らにとってパートナーとは単なる「アイテム」です。
自分にとって「利益」になるアイテムであり、対等な人間とは思っていませんし、
パートナーを尊重する考えはありません。
「トロフィー」「奴隷」「サンドバッグ」「金銭搾取」「支配欲」
これらを満たせる相手を求めているだけなのです。
アイテムをゲットするために、真の人格を隠して、相手にとって最良の人間を演じて近寄ります。
要は彼らにとって、アイテムを得るための釣りなのです。
その前に、自分が釣り上げやすいアイテムかどうか、
アイテムが自分にとって利益があるものかどうか、きちんと見定めています。
寧ろ長年の経験で培った嗅覚が備わっていると言っても過言ではないでしょう。
以上から紐解くと、モラハラ者のターゲットになる人は、
それだけ人間的魅力を兼ね備えているともいえるのです。
そもそもモラハラ者は、相手が反発できない時や、自信を持てた時、
逆に自信を持てなくなった時などに、モラハラを発動させます。
夫婦生活が順調であったり、逆に上手くいかないときや、妻が夫を上回るような出来事があったりすると、
モラハラ者の嫉妬や偏った自信にスイッチが入るのです。
このような状況になると、一般的には
「夫を立ててあげること」「夫婦生活は我慢が必要」「優しく諭して自覚を促す」
などがアドバイスとされることがあります。
しかし残念ながら、これらの方法はモラハラ者には全く通用しません。
モラハラ者は、相手の我慢を引き出したり、立ててもらうことで、
相手の限界値はまだ先だと判断し、モラハラを更に増長させるからです。
また、モラハラ者の改心は非常に稀であり、
自分の不満や怒りの感情を相手にぶつけることは当たり前であり、悪いとはみじんも思っていません。
モラハラ行為の翌日に、反省した素振りを見せることがよくありますが、
それは、飴とムチによって相手をコントロールできると知っているからです。
相手を自分の軍門に置くことができれば、自分を肯定できると考えていますし、
モラハラ者は常に自分が主体であるため、相手の立場や感情を推し量ることはできません。
今、あなたは夫から離れたいと考えて、第三者へ相談を持ち掛ける行動を取ることが出来ました。
これだけで大きな一歩だと言えますし、自分の気持ちに正直になりたいという、
極めて重要な進歩だと言えるでしょう。
モラハラを受けて辛いと感じているならば、その被害から逃れることを考えるのは当然のことです。
モラハラは、受け続けることで自尊心が麻痺してしまい、
自分が何を望んでいるのか、何が大切なのかが分からなくなってしまう、人の心を蝕む悪質な行為です。
自分が分からなくなってしまう前に、自分主体で考えて、自分を守る行動を取ることが極めて重要です。
でも、あなたはもう大丈夫です。一歩を踏み出せたことにまず自信を持ち、
少しずつ確実に前へ進んでいきましょう。