「結婚する前は理想以上に優しい人だったのに」
「付き合ってしばらくは驚くほどいい人だった」
「同居し始めた途端に恐怖で支配されるようになった」
「付き合い始めたら禁止事項をあれこれ伝えられた」
「親しくなったら人格が180度変わってしまった」
モラハラの被害を受けたことがある人ならば、分かりすぎるほどよくある訴えではないでしょうか。
当サロンで受けているモラハラのご相談において、全員のご相談者が同じ経験があったと答えています。
基本的にモラハラ加害者の性質は、自己愛性パーソナリティ障害を内包しています。
彼らは周囲から得られる評価が自分の全てなので、優しい人や良い人を演じることは朝飯前です。
過去の栄光を過剰にアピールすることも特徴です。
私自身かつて出会ってしまった男性で、付き合い始めてからモラハラをされて離れた人がいました。
その人も典型的な自己愛性パーソナリティ障害でしたが、思い返すとその人も同様に第一印象が良すぎました。
関係が深くなるまでその異常さに気付けなかったのです。
■親しくなって初めて見えてくる自己愛者の本性
自己愛性パーソナリティ障害=自己愛者は、承認欲求から得られる安心感を常に欲しているため、
自己愛者がターゲットと認識した相手以外には、良い人や優しい人を演じ続けます。
逆にターゲットとして支配できると踏んだ相手には、自他の境界を踏み越えて侵略を開始してきます。
支配とはモラハラや脅迫や依存や執着などを用いて、相手を自己愛者の思惑通りに取り込む状態を指します。
自己愛者は過去の生育歴での発達段階において、母子分離という大事な精神発達をし損ねています。
心身面での自分の安定に必要なケアを、自分の周りの人間がすることだと認識しています。
過干渉な親に育てられた子供に多く見られる問題でしょう。
過干渉な親は自分の心の安定を子供に依存した結果であり、子供は過干渉な親の被害者でもあるのですが、
その子供は親のモデルケースが親であるため、過干渉な親になってしまう輪廻が起きてしまいます。
過干渉は依存であり自己愛であると考えてください。
自己愛は自覚できるかできないかの問題ではありません。
自分と他者は全く違う一個人であるという、普通ならば当たり前の感覚が獲得できていないからです。
この自他の境界線を持たないことが大きな問題となります。
そもそも自己愛者は不安定な成長過程で、上手く立ち回るための術を上手く構築しています。
そのため一般的に好印象と受け取られる性質を、作り上げて擬態することに長けています。
自己愛者の第一印象が良すぎるのはそのためです。
しかしそこには見せかけなので良心は一切存在しません。
ターゲットとされた人は第一印象で感じた印象を、彼らと断絶するまで持ち続けてしまうでしょう。
これが彼らに一度巻き込まれてしまうと、なかなか逃げ出せなくなる最大の問題点となります。
「あんなに良い人を怒らせたのは自分が悪いせいだ」
こう思わせるところが彼らの巧みな罠なのです。
自己愛性パーソナリティ障害は人格形成上で生じた偏りです。
自分の中で完結する動機付けができないため、周りの人間を利用した動機付けで自分を保とうとします。
要するに生育歴において精神が未成熟のまま、身体だけが大人になった大人の形をした子供と言えます。
親から過度な過干渉を受けてきた子供や、ネグレクト系のDVを受けてきた子供に多く見られます。
■白馬の王子様のお姫様扱い
自己愛者による支配が完了してモラハラが始まると、あんなに優しかったのになぜ?と被害者は口を揃えます。
これは恋人関係に留まらず友人関係であっても同様に、自己愛者はターゲットに目星をつけ距離を縮めてきます。
いわゆるグイグイと一気に間合いを詰めるやり方です。
自己愛者が間合いを一気に詰めてくる理由は、思う通りにならない時間があると自分が不安だからです。
不安はすぐに解消したい自己中心的な思考がそこにあります。
過分なプレゼントやリッチな食事や旅行に誘いだしたり、
やたらと褒めてきたり趣味嗜好が合っていたり、
やたらと意見が合ったり共感ポイントが合っていたり。
そんな夢のような時間をプレゼントされたターゲットは、
「やっと巡り会えた運命の人」「奇跡のような出会い」
このように感じて強く惹かれてしまうのも仕方ありません。
そこに高収入や高いステータスなどが兼ね備わっていると、
相手を盲目的に受け入れてしまったとしても、彼らの巧みさを考えるとやむを得ないことでしょう。
彼らは「信頼関係」を理解することは出来ません。
そもそも信頼とは、人の善悪に拘わらず受け入れようとする思考を指します。
彼らは「利害関係」ならば理解が可能です。
利害とは文字通り「自分にとって利があるかどうか」
あくまで自分に負が及ばないかどうか、自分の思う通りにいくかどうかが評価基準です。
要は相手が自分にとっての利益になると判断すると、手中に入れるために相手の好みそうな撒き餌をします。
このような行為は普通の愛情とは全く異なるものです。
このような経過を経て相手の支配が完了したとき、そこから彼らの本領が発揮されモラハラが始まります。
モラハラはイジメ依存と似たようなところがあります。
自己愛者は自分で処理できない不安な自身の問題を、処理する役割としてターゲットを求め依存しています。
■自己愛者から離れることの困難さ
自己愛者はターゲットを利用し依存しているため、当然離れたくありませんし逃したくありません。
利が得られなくなることが不安だからでしょう。
相手に対して常に上位者として君臨していたいため、口では別れても良いなどと挑発的な言い方をしますが、
いざターゲットが離れようとすると同情を誘います。
時には泣き落としをして引き止めることさえあります。
それが通じないと分かるといきなり激昂したり、被害者意識丸出しにして相手の非を責めてきます。
「自分はもうダメだ」などと言って自傷をほのめかし、狡猾に相手の情を引き出そうともします。
もしも自己愛者のターゲットにされてしまったら、「相手は病気なのだ」という簡単な理解で良いので、とにかく自分の身の安全を第一に考えてください。
以降、一切の連絡手段を絶って逃げる選択しかありません。
ちなみに自己愛性パーソナリティ障害は、「自分は自己愛者である」という認識は「絶対」持てません。
逆に自分で「自分は自己愛者かもしれない」と思えたら、それは自己愛者ではないことの証明であるといえます。
パーソナリティ障害と聞くと、精神科での治療が効くのではないかと考える方がいますが、
これはその人の「性質」であり「病気」ではないことを理解する必要があります。
そのため診察を受けても対症療法もないため継続が難しく、そもそも自己愛者は自分から治したいと思わないため、
精神科でも治療ができないと言われてしまうのがオチです。
相手に改めてほしい・変わってほしいと願う前に、まずは自分自身の考え方を改めるべきでしょう。
自分を大切にするためにどうすべきかの答えは一つであると考えます。