長年連れ添った夫婦が、それぞれの人生を改めて見つめ直す中で、「熟年離婚」という選択をされる方が増えています。
お子様が独立し、子育てという大きな役割を終えた今、ご自身の残りの人生をどう生きていくか、真剣に考える時間が増えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
離婚という決断は、決して簡単なことではありません。
これまで築き上げてきた関係性を手放すことには、少なからず不安や寂しさが伴うことと思います。
しかし、それは同時に、新しい自分らしい人生を歩み始めるための、大切な一歩でもあります。
お互いの気持ちが整理され、離婚すること自体には合意できたとしても、実際に話し合いを進めていく中で、多くの方が直面する大きな壁があります。
それが、「財産分与」です。
■財産分与の話し合いでつまずく時、あなたに必要な「もう一つの視点」
先日、このようなご相談がありました。
長年連れ添われた60代のご夫婦。
奥様から離婚を申し出られ、ご主人はその意向を受け入れられました。
慰謝料など、離婚の原因に関する話し合いは比較的スムーズに進み、お互いの気持ちの整理もつき始めていたように見えました。
しかし、いざ「財産をどう分けるか」という話になった途端、それまで穏やかだった話し合いが、急に滞ってしまったのです。
このようなケースは、決して珍しいことではありません。
離婚という大きな決断を下したとしても、長年の結婚生活で築き上げた財産をどのように分けるかという問題は、時に感情的な対立を生み、話し合いを難しくすることがあります。
ご夫婦お二人だけで話し合おうとすると、どうしても感情が先行してしまったり、「相手に譲りたくない」という気持ちが芽生えたりして、なかなか前に進めない、というお話をよく耳にします。
そんな時こそ、冷静な第三者の目が必要となるのです。
「弁護士さんに相談すればいいのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、弁護士は法的な面からあなたをサポートしてくれます。
しかし、夫婦の共有財産を細かく掘り起こしたり、具体的な財産分与を有利に進めるための戦略を立てたりといった、経済的な側面でのきめ細やかなサポートは、時間的な制約もあり、難しい場合があるのも事実です。
例えるなら、「餅は餅屋」という言葉があるように、それぞれの専門分野があります。
法律の専門家である弁護士と、お金に関する専門家であるファイナンシャルプランナーや、総合的に離婚をサポートするカウンセラーでは、得意とする分野が異なるのです。
■「ざっくり半分」で本当に大丈夫?知っておきたい財産分与の真実
「夫婦の財産だから、ざっくり半分にすればいいんでしょう?」
そう思われている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、多くの場合、それでは十分にあなたの権利が守られない可能性があります。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げてきた財産を、それぞれの貢献度に応じて清算することです。
たとえ名義が一方の配偶者になっていたとしても、それは夫婦の協力があってこそ築き上げられたものと考えられます。
あなたが専業主婦(主夫)であったとしても、家庭を支えるという形で貢献しているのですから、財産分与を請求する権利はありますし、離婚の原因を作った側からも請求することは可能です。
では、具体的にどんなものが財産分与の対象になるのでしょうか?
結婚期間中の財産は、大きく分けて以下の3つに分類されます。
特有財産:
結婚する前から各自が持っていた財産や、結婚中に親から相続した財産、贈与された財産、または個人の趣味のための高価な品物など、夫婦の協力とは関係なく得た財産のことです。
これらは基本的に財産分与の対象にはなりません。
共有財産:
夫婦の合意のもと、共同名義で取得した財産や、共同生活に必要な家具、家電などです。
実質的共有財産:
結婚期間中に夫婦が協力して築き上げた財産でありながら、名義が夫婦の一方になっているものです。
例えば、夫名義の預貯金や不動産、妻名義の株式などがこれにあたります。
■意外と知らない?財産分与の対象となる具体的なもの
財産分与の対象となる財産は、皆さんが思っている以上に多岐にわたります。
現金・預貯金:
これは分かりやすいですね。
しかし、中には夫婦の一方が知らなかった口座や、へそくりなど、隠れた預貯金が見つかることもあります。
これらを正確に把握することが重要です。
不動産(土地、建物):
自宅や投資用の不動産も含まれます。
その評価額については、不動産鑑定士に依頼して正確な評価を出す方法もありますが、路線価や公示価格、購入時の価格などを参考に、客観的で合理的な方法で評価されるのが一般的です。
動産(家財道具、車など):
家電製品や家具、車なども対象となります。
これらは現物で分け合うこともあれば、その評価額に基づいて精算することもあります。
その他:
ゴルフ会員権、生命保険の解約返戻金、退職金、年金、さらには職業上の資格(医師免許など)や、夫婦の一方が経営する事業の財産なども、ケースによっては財産分与の対象となることがあります。
また、別居期間中の生活費(婚姻費用)についても考慮される場合があります。
これらすべての財産を正確に把握し、その価値を算出し、公平に分ける作業は、想像以上に手間がかかり、専門的な知識も必要とします。
特に、どちらか一方だけが家計を管理していたり、夫婦の関係が悪化している場合には、必要な書類を集めること自体が困難になることも少なくありません。
意図的に財産を隠しているケースや、共有財産と特有財産の区別が曖昧な場合など、ご夫婦だけでは解決が難しい問題が浮上することもあるでしょう。
■後悔しない未来のために:専門家と手を取り合って
特に、これまで専業主婦(主夫)だった方や、非正規雇用で働いてきた方にとって、財産分与は今後の生活の基盤を築く上で非常に重要な意味を持ちます。
もし、この財産分与の話し合いで不利な条件で合意してしまえば、将来の生活に大きな影響が出てしまう可能性も否定できません。
「ざっくり半分」といった、一般的な法律の基準だけで判断してしまうと、安定した収入がない側が大きく損をしてしまうことも十分に考えられます。
だからこそ、離婚に際しての財産分与は、決して軽視できない、極めて重要なポイントなのです。
先の相談事例のご夫婦の場合も、奥様がご主人の副業による収入を正確に把握していなかったことや、不動産の評価に関する知識が不足していたことから、財産分与の話し合いが停滞していました。
そこで、私たちはファイナンシャルの専門家と連携し、財産に関する詳細な情報を掘り起こし、正確な財産開示一覧を作成するサポートをさせていただきました。
その結果、これまで「ざっくり半分」という方法では決して得られなかった金額を、奥様が受け取ることができたのです。
■離婚後の後悔を防ぐために専門家への相談を
財産分与の請求には、離婚が成立してから2年間という期限があります。
この期間を過ぎてしまうと、原則として財産分与を請求する権利を失ってしまいます。
離婚は、新しい人生のスタートです。
そのスタートを、不安なく、そして後悔なく切るためには、財産分与という重要な課題に真剣に向き合い、適切な準備をすることが不可欠です。
もし、あなたが今、財産分与について不安を抱えていたり、話し合いがなかなか進まなかったりするのであれば、一人で抱え込まず、ぜひ専門家を頼ってください。
私たち心理カウンセリング・離婚カウンセリングでは、あなたの心のケアはもちろんのこと、必要に応じてファイナンシャルの専門家などと連携し、あなたが納得のいく形で財産分与を解決できるよう、多角的なサポートを提供しています。
私たちは、あなたが新しい人生を安心して、そして豊かに歩んでいけるよう、全力で寄り添い、サポートさせていただきます。
■あなたの悩みに寄り添います
もし、あなたが今、離婚や財産分与についてお悩みを抱えているのであれば、ぜひ一度、当カウンセリングにご相談ください。
私たちは、あなたの気持ちに寄り添いながら、最適な解決策を一緒に見つけていくお手伝いをさせていただきます。
安心してご相談いただけるよう、初回のご相談も承っております。
まずはお気軽にご連絡ください。