あなたは「置き去り」にされた経験はありますか?
それは、物理的な「置き去り」かもしれませんし、心の中でひとりぼっちにされたような、精神的な「置き去り」かもしれません。
車の中に残され、大雨の中を2時間かけて歩いて家に帰った女性。
雪が降る中、スーパーに置き去りにされ、何キロも歩いて帰ったお母さん。
新婚旅行先の見知らぬ土地で、夜の街に取り残された友人。
妊娠中の大きなお腹を抱えて、ショッピングモールや他人の家にひとり置き去りにされた女性。
結婚指輪を落とした妻に激怒して、探し回る妻を置き去りに一人ベッドルームに引きこもった夫。
これは、実際に私のカウンセリングルームで耳にした、心に深く刻まれたエピソードの数々です。
そして、私自身もまた、この「置き去り」という行為が、どれほど深い心の傷になるかをよく知っています。
なぜ、愛するはずの人が、こんなにも無責任で、残虐な行動をとるのでしょうか?
それは、「相手を支配したい」という強い欲求があるからです。
そして、その根底にあるのは、「自分は愛されている」という確信のなさ。
不安な彼らは、相手を「置き去り」にすることで、恐怖を植え付け、自分の手元に引き戻そうとします。
「自分がいなくなったら、あなたはどうしようもなく困るだろう?」
「置き去りにされたくなかったら、素直に自分の言う通りにしておけばいい」
そうすることで、相手に自分の存在の大きさを認めさせ、自分の優位性を確認しているのです。
彼らは、あなたの悲しみや苦しみを見て見ぬふりをします。
なぜなら、それは彼らが植え付けた恐怖が「成功した」証拠だからです。
そして彼らの行為が「成功」を収めると、それまでの態度を豹変させて優しくしてきたり、行為について謝ったりします。
優しくしてくれたから、謝ってくれたからと許して留まってしまうと、同じことが何度も繰り返されることになってしまうでしょう。
彼らの心の裏にあるものは、「自分に逆らったらまた同じ目に遭わせるぞ」という圧力と支配です。
また、この行為は恋人や夫だけの問題ではなく、毒親が子供を支配するために用いられる行為でもあることに注意してください。
「置き去り」は心の鎖。そして、「モラハラ」という名の正当化
多くの女性が経験するこの「置き去り」は、単なる迷惑行為ではありません。
これは、モラルハラスメント(モラハラ)の典型的なパターンです。
モラハラ加害者は、自分の行動を絶対に認めません。
むしろ、被害者をさらに攻撃し、自分を正当化しようとします。
「お前が俺の機嫌を損ねるようなことを言うからだ」
「俺は怒ってなんかいない。お前が勝手に騒いでいるだけだ」
「お前がそうやって運転を止めろと騒ぐから、車を走らせたんだ」
これらは、モラハラ加害者がよく使う言葉です。
彼らは自分の行動を一切反省せず、むしろ被害者であるあなたのせいにしてきます。
真冬の大雨の中、夫に置き去りにされ、スマホも財布もなかったため、やむなくずぶ濡れになりながら2時間かけて歩いて帰った妻。
翌日妻が体調を崩しても、夫は見て見ぬふりでした。
「自分が置いていった」という事実に向き合うどころか、妻のつらさを無視することで、自分の行動を正当化し続けているのです。
「置き去り」の連鎖を断ち切るために
この「置き去り」や「モラハラ」の連鎖を断ち切るために、あなたに伝えたい具体的なステップが3つあります。
ステップ1:これは「あなたのせいではない」と心から理解する
まず、何よりも大切なこと。
それは、「あなたが悪いわけではない」ということを意識することです。
「もしかして、私がもっとうまくやれば、彼はこんな行動をとらなかったのかもしれない」
そう考えてしまうのは、心の傷が深い証拠でしょう。
彼は、あなたが何をしたかに関わらず、自分の感情をコントロールできず、あなたを傷つけるという選択をしたのです。
それは、あなたの問題ではなく、彼自身の問題です。
この事実を、まずはしっかりと受け止めてください。
ステップ2:「心の防衛線」を築く
次に、彼との間に「心の防衛線」を築くことです。
彼は、あなたの心の隙間を狙って、コントロールしようとします。
物理的に置き去りにされた時、あなたはとてもつらかったと思います。
そのつらさを乗り越えた自分を、どうか褒めてあげてください。
そして、その経験から学んだことを活かしてください。
もしまた、彼があなたをコントロールしようとしてきたら、「ああ、また始まったな」と、一歩引いた目で見てみましょう。
彼の攻撃的な言動を、あなた自身への批判として受け止めてはいけません。
それは、彼自身の心の叫びなのだと、客観的に捉える努力をしてください。
ステップ3:一人で抱え込まない勇気を持つ
この問題は、決して一人で解決できるものではありません。
友人、家族、信頼できる人に話してください。
そして、必要であれば、専門家であるカウンセラーを頼ってください。
母親が雪の中を歩いて帰ってきたあの日の悲しみを忘れられず、母親のために戦って、遂に免許取得を叶えさせた娘さん。
「置き去り」という経験をバネに、自分で車を買って人生を切り開いた女性。
彼女たちは、「一人で抱え込まない勇気」を持つことで、人生を切り開くことができたのです。
あなたがあなたらしく、輝くために
このコラムを読んでいるあなたも、もしかしたら似たような経験に苦しんでいるかもしれません。
でも、もう大丈夫です。
あなたは、一人ではありません。
「置き去り」という行為は、あなたの価値を傷つけるものではありません。
それは、彼ら自身の弱さの表れです。
自分自身を大切にすること。
自分の心の声に耳を傾けること。
そして、「もう、これ以上傷つかない」と決意すること。
それが、あなたが自分らしく、輝く人生を歩み始めるための第一歩です。
あなたの人生は、あなたのものです。
さあ、心の鎖を解き放って、新しい一歩を踏み出してください。
誰よりもまず、自分自身を大切にしましょう。
そこからあなたの前向きな人生が始まります。