■心の奥に芽生えた小さな違和感
「明日、私の家に来ない?」
初めて彼氏の家に誘われる日、それは多くの人にとってドキドキする、少し特別な瞬間でしょう。
これから始まる二人の関係に期待を膨らませ、何を着ていこうか、どんな手土産を持って行こうか、あれこれと考える時間もまた楽しいものです。
でも、そのささやかな期待が、ほんの些細な一言で曇ってしまうことがあるのをご存知でしょうか。
「夕飯、どうしようか?外で食べる?それとも、家で俺のために作ってくれてもいいよ」
悪気のない、何気ない一言かもしれません。
でも、この言葉に「ん?」と心の中に小さな違和感を覚えたことがある人は、少なくはないでしょう。
私はこれまで多くの女性たちの話を聞いてきました。
その中には、この「小さな違和感」が、いつしか大きな「心の痛み」に変わってしまった人もいます。
今日は、そんな「小さな違和感」がどのようにしてパートナーからのモラハラに繋がっていくのか、そして私たちがどうすれば自分自身を守れるのかを一緒に考えてみたいと思います。
■いつしか「都合のいい女」になっていた私
これは、私の友人の話です。
彼女はとても明るく、料理も得意な素敵な女性でした。
初めて彼氏の家に遊びに行くことになったとき、彼女は張り切って肉じゃがを作ったそうです。
彼氏は「すごく美味しい!」と大喜び。
その笑顔を見て、彼女はとても幸せな気持ちになったと話していました。
しかし、2回目に遊びに行ったとき、パスタを作ると「どうしたの?今日は手抜きだね」と言われたそうです。
手抜きなんてとんでもない。
パスタソースも手作りで、彼女なりに心を込めて作ったのに、その一言にショックを受けました。
でも、彼の言葉を「きっと冗談だよね」と自分に言い聞かせて、笑顔で返したそうです。
そして、交際を続けるうちに、いつしか彼氏の家に行くたびに、食事を作るのが「当たり前」になっていきました。
最初は喜んでくれていたのに、次第に「もっとこういうのが食べたい」「今日の味付けはイマイチだね」と注文やダメ出しが増えていきました。
遂には、「掃除もしてってくれない?」「洗濯物も溜まってるからお願い」と、家事全般を頼まれるようになっていきました。
彼女は「彼のために頑張ってあげたい」という気持ちで、彼の家にいる間は努めて明るく、家政婦さんのように家事をこなしていました。
でも、いつからか、彼の家に行くのが憂鬱になっていったそうです。
そして、ある日、彼女は気づきました。
自分は彼にとって「愛する彼女」ではなく、「都合のいい家政婦」になってしまっているのではないかと。
そして、そのことに気づいたとき、彼女の心はもうボロボロになっていました。
■小さな違和感の正体とは
どうしてこんなことになってしまうのでしょうか。
この原因の一つに、日本社会に根強く残る「女性が家事をするべき」という古い価値観があるのかも知れません。
本来、家にお客様を招くとき、もてなすのは家の主人でしょう。
食事を用意したり、飲み物を出したりして、お客様に居心地よく過ごしてもらうのが、おもてなしの心です。
しかし、こと恋愛となると、「彼女が家事をするのは当たり前」という価値観が顔を覗かせることがあります。
彼の「ご飯作ってくれてもいいよ」という言葉は、一見、優しさや気遣いのように聞こえるかもしれません。
しかし、その言葉の裏には、「君は俺のために尽くして当たり前だよね」という無意識の期待が隠されています。
そして、この「してもらう側」と「してあげる側」という力関係が、二人の間に少しずつ生まれていきます。
最初は食事作りだったものが、やがて掃除や洗濯も頼まれるようになり、次第に「お金を貸して」など、金銭的な要求へとエスカレートしていくことも少なくないでしょう。
このようにして、相手はどんどん「与えてもらうこと」に慣れていき、あなたはどんどん「与え続ける」ことを求められていきます。
そして、この関係が続くと、あなたの心はすり減り、気づけば自己肯定感もボロボロになってしまうのです。
彼からしたら無意識の甘えなのでしょうが、関係を上手く作りたいと考えている彼女からしたら、それはモラハラ以外の何物でもありません。
■自分を守るための3つのステップ
では、私たちはどうすればこの「小さな違和感」に気づき、自分自身を守ることができるのでしょうか。
ステップ1:違和感を大切にする
「ん?」と心の中で感じた、その小さな違和感を無視しないでください。
「気にしすぎかな」「きっと悪気はないよね」と自分に言い聞かせる前に、一度立ち止まって考えてみましょう。
「なんで私はこの言葉に引っかかったんだろう?」と、自分の心と向き合ってみることが大切です。
ステップ2:自分の気持ちを言葉にする
もし、相手の言葉や行動に「嫌だな」と感じたら、正直に伝えてみましょう。
「急にご飯を作ってって言われると、準備ができないから困っちゃうな」
「今日はゆっくり過ごしたいから、家事は一緒にやってもらえないかな?」
というように、柔らかい言葉で、しかしハッキリと自分の気持ちを相手に伝えることが大切です。
そこであなたの気持ちを尊重してくれないような相手なら、それはもしかしたら、あなたにとって「居心地のいい」パートナーではないのかもしれません。
ステップ3:相手の言動で相手を判断する
「彼は本当は優しい人なんだ」
「本当は、私のことを大切に思ってくれているはず」
そう思いたい気持ちはよくわかります。
しかし、人は言葉ではなく、行動でその本心を表します。
言葉では「愛している」と言いながら、あなたの心を傷つける行動ばかりとる人は、残念ながらあなたを心から大切にしているとは言えません。
相手の言葉ではなく、行動で相手を判断する勇気を持ちましょう。
■自分を大切にできる相手との幸せな未来
私たちが望むのは、お互いを尊重し、支え合いながら歩んでいけるパートナーです。
それは、どちらか一方が「尽くす」関係ではなく、お互いが「与え合う」関係です。
結婚したら家事をしてくれると思っていた元夫との結婚生活で、家事や育児の負担が自分ばかりにのしかかり、結局キャリアを諦めてしまうことになった女性は、現代において決して珍しくありません。
しかし、本来、結婚とは、二人が手を取り合って、新しい生活を築き上げていくことです。
家事も育児も、二人の生活を豊かにするための大切な共同作業です。
あなたが「この人と一緒にいると、心が温かくなるな」「この人とは、自然体でいられるな」と感じられる相手。
そんな相手との出会いは、きっとあなたの人生をより豊かで幸せなものにしてくれるでしょう。
そして、そういう相手は、きっとあなたの「小さな違和感」に気づき、一緒に向き合ってくれるはずです。
どうか、自分自身の心を大切にしてください。
そして、あなたを心から大切にしてくれる、素敵なパートナーと出会えることを願っています。