離婚は人生最大のストレッサー
夫・40歳、専門職
妻・32歳、専業主婦
子・8歳♀、6歳♂
婚姻期間10年を経て、妻から離婚申し立て、夫婦関係調整調停から審判を経て離婚。
慰謝料無し、財産分与あり、養育費あり。
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結婚生活に見切りをつけ、夫との離婚を決意した妻。
離婚当時(※22年前)はまだ、離婚に関する相談機関というと、弁護士との面談しか手段がありませんでした。
妻は親権や養育費などの取り決めを文書に残したいことと、
夫と揉めるのが怖かったため、家庭裁判所に仲裁を求めることに。
家裁では、まず相談員が受付のための詳細を色々と聞いてくれます。
もちろん、この段階で方向性を迷われる方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、妻は離婚の決意が固かったため、
夫に求める希望を提示し、「夫婦関係調整調停(親権・養育費)」として申し立てをしました。
一般的には、夫婦間での話し合いをもって「協議離婚」をまとめる形が一番理想的です。
しかし、夫婦間での話し合いが円滑にできないからこその離婚でもあるため、
協議を飛び越していきなり調停へ進める方法が無難かもしれません。
また、協議離婚ではついおざなりになりがちな夫婦間での取り決めなども、
きちんと法的機関で証明される形で文書に残せるため、約束不履行などが起こりにくいとされています。
しかし法的機関と言えども、争いが紛糾してしまうと調停離婚から審判離婚、
果てには裁判離婚へと移行する可能性も無きにしも非ず、長期係争のリスクが全くないとは言えません。
その間、夫婦のみならず、子供がいる場合は何かと生活が不自由になってしまいがちです。
離婚が決定するまでの間、夫婦が同居・別居どちらの場合でも、
経済的・精神的な不自由さを抱えながら過ごすことは、かなり厳しいと言えるでしょう。
妻の場合は子供も小さく、専業主婦だったこともあり、
離婚まで同居を続けながら、家庭内別居という形を取りたいという希望を持っていました。
家裁で調停委員を介した話し合いで、
別居が可能になるくらいの婚姻費用が受け取れるのであれば、別居も検討したいと伝えたところ、
夫側からは「離婚には応じない。婚姻費用を支払うつもりはないし、別居は許可しない。」
という回答が返ってきたのです。
妻の場合、幸いなことに夫の収入や預貯金をきちんと把握していたため、
別居可能な婚姻費用を請求出来る(婚姻費用算定表による)と判断、
お互いの精神的安定のためにも別居がベターという裁判官判断が下され、
夫婦の別居生活がスタートしすることになりました。
この判断は最終的に、夫婦双方にとって非常に有益な冷却時間となったのです。
単純に離婚といっても、夫婦が籍を抜くという話だけではなく、
それまで夫婦が築いてきた生活、親族関係、友人関係、仕事関係、
全てが一変してしまう大きなターニングポイントとなるわけです。
不仲だった夫婦がまずリアルに距離を置き、冷静になって今後の人生を考えたことで、
改めてお互いを尊重するとは何か?を見据えることができたのでしょう。
別居から妻の生活も落ち着いたころ、再度離婚へ向けて離婚調停がスタートしました。
離婚の条件として、養育費を月額払いとし、慰謝料は発生せず、
夫婦の婚姻期間に応じた財産分与を取り決め、親権と監護権を妻が取得することが決定しました。
婚姻中に問題となった夫の不貞については、
係争が長期化することで被るデメリットのほうが大きいと考え、妻から慰謝料請求は行わないとし、
その代わりに子供との面会を適時行うという約束を取り決めました。
目先の金銭よりも、父親として子供の養育に携わってほしかった妻の希望が強かったからです。
これら条件について大きく揉めることがなかったことが幸いしたのか、
頑なに離婚拒否の姿勢を取っていた夫も考えが氷解し、調停開始から結審まで半年ほどの時間が掛かったものの、
夫婦は無事に離婚することができました。
……あれから22年。夫は折に触れて忙しい合間をぬって子供と面会を続けてきました。
養育費も欠けることなく完済し、子供が成人すると共に好きなお酒を飲みに出かけることもあるそうです。
最近では「元家族」として家族旅行をすることもありました。
夫婦は昔を振り返ることはなく、元家族として今の時間を楽しむことが出来ると話しています。
それで良いのだと思いますし、家族と言えどもそれぞれがひとりの個人であり、尊重されるべき人間です。
「こうあらねばならない」から「これでもいいよね」と考えて、
近付き過ぎてトラブルになると感じたら、適時距離を取り離れてみる形は、
最終的に家族ひとりひとりの自立や成長、そして尊重に繋がる良い方法であり、最適解ではないでしょうか。
そう考えると、夫婦や家族にとって離婚は必ずしも悪い選択ではないと、実体験からそう感じています。