夫・50歳、会社員
妻・48歳、専業主婦
結婚13年、子供10歳
別居から2年経過
■離婚へ向けた泥沼
夫は長年の「性格の不一致」を理由に妻との離婚を決意しました。
妻は夫の離婚宣言を話し合いから拒絶して一方的に子を連れて実家へ戻り別居を開始し、
弁護士に依頼し家庭裁判所で婚姻費用請求調停を提起しました。
妻は年収800万円・手取り30万の夫に対して月額20万の婚姻費用を請求し離婚は拒否。
夫は妻に早期離婚を求めて離婚調停を提起します。
■夫が妻に離婚を求めた理由
夫が離婚事由として挙げたものは性格の不一致でしたが、
その詳細は「妻のヒステリー」「妻の過度な潔癖症」「妻の過剰な暴言」でした。
離婚に至る夫婦の原因は多々ありますが最も多いのは性格の不一致です。
耐えかねた夫が妻に離婚を切り出した時、
妻は何があろうと離婚はしないと夫の離婚要求を拒否しました。
離婚を拒否するならば夫の理由を聞いて再構築へ向けた改善に心掛ける態度があれば、
夫にもまだ再考の余地があったことでしょう。
しかし妻は一方的に被害者意識を募らせて夫だけを悪者にし、
自身の実家を味方につけて夫の離婚の求めを拒否してきたのです。
夫は更に不信感を募らせ離婚を要求。
それを被害者的に捉えた妻が離婚を頭ごなしに否定する。
そんな状況に耐えかねた妻は同居する夫に断りもなしに、
ある日突然妻は子供を連れて実家へ帰ってしまいました。
そして妻は弁護士を立てて夫に対し婚姻費用請求調停を提起したのです。
婚姻費用はもちろんのこと、別居に至ったのは夫のパワハラ行為が原因とされており、
別居はパワハラによる精神耗弱が原因だとした極めて一方的な主張展開がなされていました。
■結論は双方和解で離婚に至った
別居当初から当サロンにて問題解決に向けたカウンセリングを受けていた夫。
当初は自分の何がいけなくて離婚に至ったのか、妻との関係をどう捉えるべきだったのか、
夫婦の再構築を模索するためのカウンセリングが行われていました。
しかし夫婦の過去を整理していくうちに、
今後の人生を共に乗り越えていけるだけの相互扶助は妻とは築けないと考え、
離婚に向けた道を進む決意が出来たのです。
離婚の判決をもらうためには確固たる理由が必要になりますが、
この場合は不貞行為もなく妻の主張する夫のDV行為も認定されなかったため、
お互いに正攻法で離婚調停を続けていても不毛だと考えました。
そのため調停にて出したお互いの主張と婚姻費用額をたたき台にして、
離婚を前提として和解へ向けた協議を開始したのです。
それは離婚が認められる別居期間として相当の別居期間(3~5年)がありますが、
その期間に支払われるであろう婚姻費用をまとめて前倒しで支払うことで、
数年越しで争われるであろう離婚係争を数か月で和解に持ち込もうとする戦略です。
そして協議の一か月後に夫婦は調停を取り下げて和解とし、
500万の和解金と月4万円の養育費を支払うこと、
月二回の子との宿泊面会を条件に協議離婚で離婚することとなりました。
■何故夫は和解金を支払う離婚に応じたのか
会社員の夫にとって多額の和解金を支払うことは、大きな決断だったに違いありません。
しかも和解金の一部は両親に貸与してもらいました。
それでも離婚を決めたかったのには大きな理由があります。
これまで妻との同居生活において夫は様々な努力をしてきました。
それでも妻と穏やかな結婚生活を築くには諦めや我慢が大前提にあったのです。
その我慢のストレスは夫の精神を蝕み、対人恐怖になったり大きな音に敏感になるなど、
夫の仕事に多大な影響を及ぼすものでした。
そして何より夫婦の不協和音は幼い子供にも影響を与えており、
子供が夫婦に気を遣った言動するようになっていたことも、
夫が早期の離婚を決意する要因となったのです。
和解金交渉から結果的に離婚を買う形となったことに、
違和感を感じる方もおられるのではないかと思います。
夫は妻との生活でストレスを受けて精神が蝕まれるより、
早期に和解して自分の人生を大切に考えて子供への影響を避ける形を優先しました。
家族の形態が変わってしまうとしても、
自分自身に自信を持って子供と接していく生き方を選択したのです。
■妻が和解を了承するには難しいハードルも
離婚の和解に向けた協議のキモはやはり金額面での折り合いとなります。
訴訟にて離婚判決を受けるためには離婚原因(不貞など)を立証する必要があります。
民法770条1項で挙げられるのが以下の「離婚原因」となります。
1/ 相手が不貞行為をしたとき
2/ 相手から悪意で遺棄されていたとき
3/ 相手の生死が3年以上明らかでないとき
4/ 相手が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5/ その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
今回の事例の場合、以上に該当する項目が存在しないのです。
そこでカウンセラーは夫婦の実質的な別居期間を作ることを提案しました。
近年、離婚訴訟において別居が長期間に及ぶのであれば、
夫婦関係が破たんしたとみなすという考え方を裁判所が採用しており、
この判例を用いることで妻と離婚交渉をしたのです。
これを裁判の場で離婚判決を勝ち取るためには、
お互いに相手をとことん不利にして自分を有利に見せるための、
「途方もない傷つけ合い」を最低でも3年は重ねることとなります。
その最悪な状況をお互い避けるために条件を提示し妥協点を探ろうとする、
円満な離婚のための和解交渉を持ち掛けたのです。
最初は夫側からの提案を感情的に捉えていた妻も、
調停や裁判の場で実際に起こり得ることや精神的負担を考えるようになりました。
そして何よりも妻の今後の人生への影響について丁寧に訴え掛けることで、
闇雲に別居を続けながら調停を続ける不利を理解してもらうことに成功したのです。
そして前述した和解条件で夫婦は離婚を決めることが出来ました。
■第三者に仲裁を求めることの大切さ
離婚問題が紛糾した場合は夫婦当事者同士で理性的な話し合いは難しくなります。
大抵感情的な喧嘩となり話し合いは決裂し問題はこじれる一方でしょう。
そうなってしまった場合によくあるパターンとして、
友人や両親など近しい関係者が仲裁に入り余計に拗れてしまうケースが見られます。
近しい関係者はどうしても近しい側の「味方」となってしまい、
余計対立が酷くなってしまいかねないのです。
対立やこじれが酷くなって理性的な話し合いが困難になるまえに、
公平中立な第三者であるカウンセラーなどに助けを求めることで、
客観的な考えに触れて冷静さを取り戻すことが可能になるのです。
夫婦双方にとって精神的な負担が少ない話し合いの場を設けることが、
前向きで建設的な円満離婚協議を進める近道となることでしょう。
離婚後も父母が子供を中心としたタッグをいつでも組むことが出来るように、
人間的にお互いをとことん嫌いにならない状態で離婚を決めることが、
お互いと子供にとって何より重要なことだと考えています。
目の前の感情よりも一歩二歩先を見て進んでいけますように。。