Scroll Top

親の過保護や甘やかしから自己愛者と化した不幸な人

名称未設定のデザイン (24)

毒親から暴力やネグレクトなどの虐待を受けたり、ヘリコプターペアレントと呼ばれる過干渉を受けて、

自己愛者と化してしまう事例はたくさん聞かれます。

※ヘリコプターペアレント=過干渉な親

このコラムでは、過保護や甘やかしから自己愛者と化す事例について、お話ししていきます。

※自己愛者=自己愛性パーソナリティ障害

■「甘やかし」と「甘えさせる」ことの違い

ここで言う「甘やかし」は「甘えさせる」とは異なります。

まずこの違いについて分けて理解する必要があります。

「甘やかし」とは多くの場合、物理的金銭的な要求に応じすぎる状態を指します。

親が子供の行動の先回りをする状態もこれに該当します。

「甘えさせる」とは多くの場合、子供の気持ちの面で要求に応えてあげることを指します。

子供の気持ちの受け止めやスキンシップなどで、精神面を満たしてあげる行為はこれに該当します。

■親の安心のために行われる過保護

それではなぜ甘やかしや過保護が、自己愛者を作り出してしまうのでしょうか?

ご相談を受けていて気が付くのは、生育歴で両親との関係に問題があるようには感じられず、

むしろ大事に育てられてきたと感じる人が、自己愛者特有の言動パターンを行うケースに遭遇することがありました。

「自分は特別な存在である」という尊大不遜な態度。

周りの人間が自分を特別扱いすることを当然とする思考。

嫉妬心を感じた相手の価値を値引こうとするような言動。

自己愛者の典型的な言動パターンで、周囲からも「あの人はワガママな人」と定義されるが、

生育歴のエピソードで本人が毒親と感じていないケースは、過度な甘やかしや過保護が裏にあることを疑いましょう。

暴力やネグレクトなどを受けてきた自己愛者は、「ありのままの自分を愛せない障害」と言われますが、

甘やかしや過保護を受けてきた自己愛者は、親の勝手な理想で子供を装飾しすぎてしまったため、

ありのままの自分が分からなくなったのだと思われます。

■過保護は虐待である

実は過保護や甘やかしも虐待のひとつと言えます。

子供がありのままの自分を受け入れながら、成長していくことを阻害してしまうからです。

親が子供の自立心を摘み取ってしまうという点が、成長と共に子供の思考の障害となって現れます。

カウンセリング事例でこのようなものがありました。

60歳を過ぎても自分の欲望をコントロールできず、利用出来る人間を上手く取り込んでは良心を搾取して、

価値がなくなると無惨に捨てるのを繰り返しているのです。

家族に対しても当然同じ扱いをしてきたので、妻や子供には当の昔に愛想を尽かされています。

自己愛者ですから俺に従わない者が悪いという論理です。

彼は「自分が欲しいものは何としてでも手に入れる」という野心家であり尊大かつ不遜な性質でした。

田舎で代々続く地元の有力者の家に生まれ、強引な手腕で同じく野心家だった祖父の影響を受け、

その娘である母からはいつも甘やかされて育ちました。

主に彼を育てたのは祖父とは対照的な甘やかし系の祖母。

その周りには常に祖父の会社の女性従業員たちがいて、いつも女性たちに囲まれてちやほやされて育ったのです。

そもそも人は、挑戦して失敗を経験し痛みを負いながらも、それを自分で克服し学びに変えていくものです。

ところが甘やかしや過保護な環境下で育ってしまうと、それらの痛みを自分自身で克服するという貴重な経験ができません。

虐待や過干渉による自己愛性パーソナリティ障害は、支配から「自ら挑戦し成功や失敗を経験する」という、

精神性の成長に必要な経験が親によって取り上げられ、精神の健全な発達が阻害されてしまいます。

一方、甘やかしや過保護による自己愛性パーソナリティ障害は、失敗しそうなものは親によって事前に取り上げられるため、

バランス良い自己愛の発達を、親に阻害されてしまうことにより、偏った万能感を振りかざすようになります。

失敗体験を経験値に変える機会を失った子供は、「失敗から負った負の感情を自己処理できない」という、

自己愛者特有の弱い精神状態に陥ってしまいます。

■甘やかしや過保護タイプの自己愛者の傾向

彼は虐待タイプの自己愛者とは多少異なっていました。

他者に対する共感能力は多少持っている感じはあるのです。

自分の内側にいる人間と認識している人の悲しみや、喜びにはある程度の共感力を有しているようでした。

相手が敵か味方かの価値判断しかありませんが、利害関係上の敵とみなした相手に対する周囲の反感には、

感情を露わにして共感を示すことはあったのです。

しかし自他の境界は非常に曖昧でした。

曖昧というよりも全く持たないに等しかったのです。

仕事に携わる人々の都合やスケジュールや役割などを、自分の思惑通りに一方的に決めて徹底させようとするのです。

人には人の都合や考えが存在するということを理解できず、自分が正義だとばかりに高圧的に押し付けました。

自分が押し付けたことが間違っていても謝罪ができず、訂正を求められると言い方が悪いと論点をすり替えて、

逆に相手の問題にしてまで謝罪を拒否しようとするのです。

彼はとにかく「自分の間違いは認めたくない」のです。

自分のせいではないと認知を歪める傾向が顕著でした。

親により失敗体験から保護され過ぎてきたため、生育歴で反省する能力を獲得し損なったのでしょう。

■自己愛者は「はだかの王様」

甘やかしや過保護による自己愛者は、分かりやすいほどの尊大不遜ぶりが特徴です。

サイコパスにみるような裏表の顔を操るという傾向はなく、総じて精神的に幼くワガママという印象があります。

「僕はこんなに凄い人なんだ」とばかりに、ステータスや肩書や過去の栄光を振りかざしますが、

虚勢を張っているわけではなく実際そう思いこんでいます。

過干渉タイプの自己愛者の場合は、正しいものや価値の高いものを持つ人に依存し、

奪うことで自己を確立しようとします。

対して過保護タイプの自己愛者の場合は、

位の高い自分は特別扱いされるべきという思考があり、

特別な自分は周りから尊重されて然るべきという態度です。

そんな特別な自分が特別な扱いを受けるのは当然と考えるので、周りから搾取して使い捨てても痛みを感じないのでしょう。

余談ですが過保護タイプの自己愛者は総じて、結婚相手に秀でたブランド力を求めます。

俗にトロフィーワイフ(自分の引き立て役)と呼ばれます。

妻のみならず浮気相手にも高望みをする傾向にあります。

妻の出自が名家だったり教育一家だったり、出身大学で値踏みしたり外見に厳しいのも特徴です。

以上から分かるとおり、過保護タイプの自己愛者は過干渉タイプの自己愛者よりも、

分かりやすくワガママであり搾取的だということです。

自己愛性パーソナリティ障害といえども、タイプ別に傾向は異なることがお分かり頂けたと思います。

自己愛者の性格傾向は一人一人異なりますが、大枠ではこの二つのパターンに分けられるでしょう。

自己愛者の性格傾向を把握し理解することで、彼らとの人間関係のストレス軽減に繋がれば幸いです。

Related Posts