世の中には良い人か悪い人か良く分からない人がたくさんいます。
良い人かと思って近づいたら嫌な目に遭ったり。
悪い人かと思って敬遠していたら、実は良い人だということに気が付いたり。
恋愛当初は見えなかった相手の怖い部分を結婚後に気が付いて、日々の生活で苦しんでいる方のお悩みもよく聞かれます。
人を疑ってかかることをしない「性善説」の人は特にこの傾向にあります。
相手を信じて関係が深くなってしまうと、自分の思い込みを変えるのは大変な決意が必要になるため、離れる決断が付かずにいつまでも苦しみ続けてしまう事例がよく聞かれます。
物語では攻撃的な人が相手の痛みに気が付いて改心したりしますが、実情は「人の痛みが分からない」ため弱者を攻撃するケースが殆どで、改心に至ることはまずないと考えてよいでしょう。
精神が発達途上にある子どもは良い方向への変化が期待できますが、大人の人格は既に完成していますから、人格の基礎部分が大きく変化することはまず望めないと考えましょう。
1.人を食い物にする人間に狙われやすい性善説な人
ここで言う「悪い人」である偏った自己愛者は、自分のために人を利用することを躊躇しません。
自己愛者は、競争や要求にどん欲で、自分は常に勝者であり、自分が周囲を従える立場の人間であり、自分の欲求は全て受け入れられて当然であると本気で考えています。
自己愛者のコミュニケーション手段は基本的に「テイカー(take)」です。
そのため、コミュニケーションを取る相手には「ギバー(give)」であることを求めます。
社会はギブ・アンド・テイクによって成立しています。
サービスを受けて、対価を与える。
優しさを受けたら、優しさを返す。
仕事もそうですが、コミュニケーションで気持ちを与えたり受けたりするなど、有償無償に関わらずギブアンドテイクで助け合う社会構造です。
しかし自己愛者の場合、利己的な考えしか持たないため、自分がもらったり得をしたりすることしか考えません。
この逆に性善説で人を疑わない人は、自己愛者の求めのまま与え続けてしまい、いつか返してくれることを信じてしまうため、自己愛者の良いように利用されてしまいがちです。
通常、人間には理性が働くものなのですが、この理性の発達が生育歴の中で阻害されたり、愛着障害などで愛情が満たされていなかったりすると、自己愛が偏ってしまう可能性があります。
皆がそろって理性や良心を持っているわけではないのです。
2.恋人や夫婦など男女間で起こるトラブルの殆どは自己愛者が絡んでいる
ここで一つの事例をご紹介します。
かつて不倫愛に苦しんでいた女性の事例です。
バツイチで再婚を考えてマッチングアプリで相手を探していた彼女は、とあるバツイチ男性から申し込みを受けます。
メール交換で楽しく会話が続いた二人は、ほどなくして直接会うことになります。
趣味や話のテンポも合っていて、彼女は運命の相手だと直感しました。
デートでの立ち振る舞いも非常にスマートな男性で、彼女にとって理想に近い男性だったのです。
彼女よりかなり年上なことが気になりましたが、それでも彼との相性を信じてお付き合いに進みました。
驚くほど急速に関係が進み、彼女にとって彼は無くてはならない存在になります。
交際が進み二週間ほど経った頃、彼から衝撃的な一言が。
「実は既婚者で妻とは長年家庭内別居中であり、離婚をしたいが妻は体が弱いので慎重に進めている。」
彼女は大きなショックを受けましたが、交際が始まって毎日のように会って話をしていて、ほとんどの時間を一緒に過ごしていた二人。
離婚は秒読みであり、再婚は彼女としたいという彼の言葉をそのまま鵜呑みにして受け入れてしまいます。
彼は経営者であったため、交際中にかかる金銭的な負担は全て負ってくれました。
その代わり、彼女は先の見えない関係を、先の見えない人生に不安を抱えながら受け入れたのです。
そうして半年が過ぎ、関係性に変化のないまま日々が過ぎていきました。
そうする中で彼に対する不安を強く感じる出来事がいくつか起こるように。
一つ目は「話し合いが出来ない」
交際の中で生じた不協和音や、解決すべき問題など、ネガティブなことであっても話し合いによって解決をしていきたいと考える誠実な彼女。
その逆に彼は問題やネガティブな話は徹底的に避け、悩みごとを話しても「愚痴は聞きたくない」と一蹴されてしまいました。
この先の二人の関係について話し合いをしたくても避けられてしまい、何故話し合いをしてくれないのか尋ねると途端に不機嫌になり、二週間くらいメールも既読無視にされました。
要は彼の耳障りの悪いことは話題にしてはならない、という暗黙のルールが敷かれてしまったのです。
二つ目は「彼の浮気」
一つ目に挙げた話し合いにまつわる不協和音をきっかけに、彼は彼女に対して上下関係を匂わせるような言動が多くなってきました。
知らないことをバカにされたり、自分の自慢話は延々とするが、彼女の話には耳を傾けてくれなかったり。
そのうち彼の行動にいつもと違ったところを感じ取った彼女は、彼の私物から浮気の証拠を見つけてしまいます。
不倫関係ということだけでも我慢しているのに、同じ立場の女性を複数持つことだけは許せなかった彼女。
浮気を知ったことを男性に話して別れを持ちかけるも、男性は証拠をみせられても浮気を認めることはなく、一言「君は僕の言う通りにしていればずっと良い関係でいられるのに」
まるで彼女が悪いから浮気をしたのだと言わんばかりの言動に、彼女は反省するしかなく、また彼を信じて交際を続行してしまいます。
不安な出来事が繰り返されつつも二年が経ち。
相変わらず関係性は変わらず、彼は離婚をする様子もなく、彼女との再婚を考えてくれている様子もなく、ただ毎日一緒に過ごす日々が繰り返されていました。
そんな中で再三再四繰り返されてきた彼の浮気。
問い詰めると彼は不機嫌を撒き散らし、モラハラをされ続けてきたため、彼女は不安を抱えながらも目先のことしか考えられなくなっていきます。
交際も彼のやりたいこと優先で、彼女のやりたいことは尊重されないことが多くあり、彼女は彼に与えることはあっても与えられることはないことに不満が募りました。
そして決定的な浮気が発覚し、彼は隠すことも悪びれる様子もなく、浮気相手に時間を割くようになっていきます。
マッチングアプリで誰彼なく声をかけ、一人や二人ではなかったそうです。
それでも頑なに別れを受け入れない彼は、まるで彼女を保険として手元に置いているようでした。
彼女が彼に別れを告げた大きなきっかけは、一緒に進めていた仕事について、上手くいかないのは彼女のせいだとばかりに逆切れした彼のモラハラ言動でした。
あまりにも理不尽かつ身勝手な言動の数々、気持ちを与え続けるだけで返してはくれない彼との関係に、心がすっかり消耗し切ってしまったのです。
彼女からはこれ以上利益が得られないと判断した彼は、次の女性が確保できているからかアッサリ別れを了承しました。
彼女は性善説から自己愛者の理不尽を受け入れ、彼に愛情を与え続け(ギバーgive)、いつか返ってくるという期待もむなしく、心身ともに疲れひとりになってしまったのです。
彼を選んだ彼女の自己責任と断じてしまうのは簡単ですが、自己愛者の搾取(テイカーtake)と欺瞞に翻弄された、性善説の女性の気の毒な事例ともいえるでしょう。
3.適切な心の境界線を引く
自己愛者は性善説な人に巧みに近づき、テイクする機会を伺っています。
時には相手の同情を誘ったり、時には相手を貶めたりもするでしょう。
自己愛者とあなたとの関係性を上下に置き、あなたの自尊心を奪い、自分の利益だけを求めてきます。
性善説だけで人を見てしまうと、相手の言動に隠された悪意をつい良心的に捉えてしまいがちです。
・可哀想だから私が助けてあげないと
・厳しいこと言うのは私を想ってくれているから
・私は期待されているんだ
・きっといつか分かってくれるから頑張らなければ
・勘違いしているだけ
このように相手の言動を性善説で捉えていると見誤ってしまうでしょう。
共感性が欠如している自己愛者はそのような期待をことごとく裏切ります。
自己愛者の目的は、あなたと共に手をつないで助け合って生きることではありません。
目的はひとつ、あなたからの搾取(テイカーtake)が目的だからです。
人とは心の境界線をきちんと引き、入り込まれてかき乱されることがないよう、充分注意する必要があるでしょう。
4.愛着形成に失敗した幼児性の精神
あなたから愛情や体や時間や労力、時にはお金をテイクすることで、自己愛者は一時的に満たされます。
しかし、求めても求めても満たされない自己愛者の心は、常に相手に要求し続けます。
自己愛者の精神が不健全な理由は、自分の心を自ら満たすことができない点です。
常に不安があり、承認欲求が強く、自己肯定感を自ら満たせないため、自分を満たしてくれる第三者が必要になるのです。
悪魔的な言動の裏側には底なしの欲求が存在します。
「いつかきっと分かり合える。」
このような期待は相手が健全な精神を持っている場合にのみ通用することです。
精神が健全に発達していない自己愛者は、精神が未熟で心が大人になり切れていないため、あなたは利用されるだけであり、健全な関係性を構築することは難しいでしょう。
自己愛者に翻弄され辛い日々が続くのであれば、あなたが守るべきは自己愛者ではなく、自分自身の心身であることは間違いありません。
性善説のあなたの良心は、あなたのかけがえのない財産です。
その素晴らしい財産を妬ましく思う自己愛者や、搾取しようと近付いてくる人間には充分注意してください。
まずはあなた自身を一番大切にすること、あなた自身が健全であることが、人との関係性を向上させるために非常に重要です。
目先ではなく、目線を先に置いて、幸せな関係性とは何かを想像してみてください。