カウンセラーコラム#4
■人はなぜ人を妬んでしまうのか
「妬み」「ひがみ」という言葉があります。
相手が元々持っているものや成功、自分より秀でた部分を見比べて劣っている点を自覚し、
悔しい気持ちを相手への恨みに転化して相手に嫌がらせをしてしまう心理を総称します。
自分と見比べることで自分が内包する劣等感が刺激されてしまい、
必要以上に相手を妬んでしまい、果てには憎悪まで抱いてしまうこともあります。
実はこの心理はどの人間の心の奥に必ずあるものですが、
自己肯定感の強弱によって精神面に与える影響はかなり異なってきます。
時には人間の運命を支配しかねない大きな問題に発展してしまうこともあるでしょう。
影響を受けやすい人が、人の何かしらの成功や実績を見聞きしてしまうと、
「何であの人が幸せになるのか?」「何故自分はそうなれないのか?」と心中穏やかではなくなります。
表向きでは「素晴らしい」と褒めたたえながらも、裏では「あの人ばかりズルい」と妬んでしまいがちです。
■全体主義という日本独特の文化
そもそも日本人は人に対して妬みひがみを感じるタイプの人が多いように感じます。
その理由を紐解いてみると、自分軸より他人軸を重んじてしまう日本人特有の意識が、
全体主義的に偏り過ぎてしまい、その心理に影響を及ぼしているのかもしれません。
要は他人が自分より優れていて、抜きん出たものを持っていると分かると、
足を引っ張って同じレベルに落とすことで安心するという心理を持つのです。
よって、特に優れた才能や財を持つ人間はとかくバッシングされる対象になってしまうのです。
「出る杭は打たれる」ということわざがありますが、
これも妬みの心境が引き起こす特有なものと言えるでしょう。
このタイプの人は、財や才能がある人間が社会的成功を収めるのを良しとせず、
そのうち失敗を重ねて没落していく様を眺めることに快楽を覚えます。
考えてみると平家物語のテーマなどがそれに当たります。
平家物語は天下を手中に収めた平清盛とその一族の没落が宗教的な厭世観で表現されていますが、
「調子に乗るとああいう様になる」という妬みの心理が書かれているようにも思えるのです。
その時代から顕在化していた日本特有の心理なのかもしれません。
■妬みの原動力になっているものを知ること
常に妬みやひがみを感じてしまう人の内側には、
コンプレックス=自己肯定感の低さが影響しているとみて間違いないでしょう。
端的にいうと、異才を持つ者が別天地に行ってしまい妬んでいたが、
失敗し潰れて再び自分がいる世界に戻ってきたことで、自分と同じなのだと安心感を得るのです。
自分の位置が低いのではないと、自分の安心感を得たいがための妬みなのでしょう。
妬み・ひがみという心理を好きだと言う人はいないと思います。
一般的に嫌な感情と考えられていますし、そんな感情を持つ自分を内心では軽蔑しています。
そのため表向きには「人の成功など別に興味を持っていない」ように振る舞ったりもしますし、
妬みやひがみの心理を内心では懸命に押し殺したりもします。
そのため嫉妬心を感じさせる人から距離を置いたりして自制します。
人のことを嫌だと思う心理を分析してみると、
そこには妬み・ひがみの心理が渦巻いていることに気が付くこともあるのではないでしょうか。
一般的に嫌な感情なだけに自分にはそんな気持ちはないと思い込もうとしますが、
実は嫌な感情は抑圧すればするほど強化される方向へ向かってしまうものです。
嫌な感情を持ってしまうことは人間ならば誰しもあることだと思います。
そのこと自体に嫌悪したりマイナスに感じたりすることはありません。
人生において良いことも悪いことも自分の素直な感情なのだと受容すること。
自分の負の感情を自己分析し正しく理解して認めること。
そして大切なことは、自分が求めているものを周りに左右されずに大事にして、
独自に手に入れる努力をし続けることでしょう。