サロンのご相談の中で多いのが離婚問題。
悩み尽くした果てに離婚を考えるのですが、相手には愛情のかけらもなく、むしろ憎しみさえ募らせていて、毎日不満と憎悪でいっぱいなのに。
なぜか、離婚を避けようとする事例が見られます。
今回の動画は、そんな「仮面夫婦」の心理を紐解きながら、その考え方に翻弄される家族に、クローズアップして詳しく解説していきます。
■子供のために離婚をしないという言い訳
1/ 片親の子供にしたくないから離婚しない
2/ 子供が辛い思いをするから離婚しない
子供がいる夫婦が離婚を考えたとき、1/ 2/の理由で、離婚を思い留まるケースが一番多いのではないでしょうか?
「子はかすがい」という名言がある通り、どんなに相手が憎くても冷静に考えてみて、子供が理由に挙がるのは当然だと思います。
例えばお互いが冷静になる機会を持ち、一体なぜすれ違ってしまったのかを、議論して意見を交わし合う。
その結果、反省すべき点が見つかり、相手の主張を理解する気持ちが芽生え、夫婦関係を見直すことが出来たのならば。
子供をきっかけに離婚を思い留まるのは、充分意味があると言えるでしょう。
しかし、子供を理由に離婚を思い留まるものの。
そこから議論して意見を交換し合ったり、向き合う努力をせずに背を向けて、ストレスを理由に不倫へ走ってしまうのならば。
子の存在をダシにして、問題から目を逸らしただけで、そこには意味がなかったと言えます。
子供のためと最もな言い訳をしつつも、本音で向き合うことをしないのなら。
それはその場限りの自己保身であり、問題を先送りしただけの話でしょう。
パートナーの不倫に気が付いていても、都合の悪いことは見て見ぬフリをしてまで、家庭という居場所の確保を優先することで、仮面夫婦という形態に執着・依存します。
仮面夫婦の関係が続いていく限り。
自分の心にずっと自ら嘘をつきながら、本音を誤魔化した生活を続けていくことになるのです。
しかし自分に嘘をつき我慢を続ける生活は、そんなに長く続けられるものではありません。
近いうちに限界に達する時が来るでしょう。
その時に自分が独り立ちできる余力があるのか。
立ち上がれる力の限界点を、越えてしまってから気が付いても、時すでに遅しです。
■離婚が面倒だから離婚しない
3/ 離婚は養育費や財産分与を決めるのが面倒だ
4/ 親権養育権や面会権などで揉めるのが嫌
5/ 現在の人生から180度変えること自体がストレス
6/ 自分が選択してきた人生を自ら否定したくない
これらは夫婦としての保身ですが、個人の社会的な体面も影響しています。
今や離婚は珍しいことではありませんが、それでもバツイチというレッテル貼りは、社会的には根強く存在しているようです。
また、離婚における子の親権の考えは、母親が優先される傾向にあります。
母親に養育能力がないなどがない限り、父親優先は認められ難いというのが現状です。
海外では当たり前の共同親権は、日本人には馴染みにくい制度と感じます。
家長制度の元で歴史を刻んできた、歴史からの思考がネックになるからです。
調停など法律を介して取り決める場合、離婚に至るまでの婚姻費用に関して、夫側の生活が成り立たなくなるほど
高額な金額を求められることが多く。
支払いのために副業を余儀なくされ、身体を壊してしまった事例もあります。
また養育側に養育費が支払われず、母子家庭の生活が困窮する事例が、大きな社会問題となっています。
養育費や財産分与を求める方法や、養育費を取り立てるための強制執行など、法的な手続きにたどり着けない母親もいます。
これら条件の定め方は公正な方法がありますが、現実的に考えると面倒に感じてしまい、つい回避する方向へ向いてしまいがちです。
■悪い雰囲気に晒し続けることの残酷さ
パートナーが不倫を繰り返している。
夫婦の会話がなく冷え切っている。
顔を合わせると喧嘩ばかりの夫婦。
お互いに相手の不幸を願っている。
家庭内別居状態で形骸化した夫婦。
このような仮面夫婦は既に終わっています。
ここで、悪化した夫婦関係を維持することで、子供に与える影響を見てみましょう。
とある大学の教授と研究チームが、400名近い学生を対象に調査をしています。
「両親の仲が良好」
「両親の仲が悪い」
「両親は既に離婚した」
それぞれの群に分けて、学生の自己肯定感のレベルや、心身の不調や抑うつ傾向などの、相関関係の研究を行いました。
その結果は実に興味深いものとなっています。
「両親の仲が悪い」のグループの学生が、心身の不調や抑うつ傾向が一番高く出ました。
「両親の仲が良好」「両親は既に離婚した」のグループの学生は、心身の不調や抑うつ傾向は低く、それぞれのグループの傾向に、大きな違いは見られないという結果でした。
この結果を見て分かる通り、仮面夫婦の元でストレスに晒し続けられた子供が、後に大きな後遺症を残しているのです。
■夫婦の精神的未熟さ
仮面夫婦はなぜ離婚をしないのか。
その理由はそれぞれがそれぞれに、執着し依存するという点に尽きるでしょう。
ここで「マズローの五段階欲求説」という、心理学の考え方をご紹介します。
1/ 生理的欲求=飢餓状態に於いて食料を得ることしか考えられない
2/ 安全欲求=生きていくための不安から生活のための金銭しか考えられない
3/ 承認欲求=自身が人から承認されること、素のままを受け入れられること
4/ 所属欲求=自身を自他共に認め、人に受け入れられたい
5/ 自己実現の欲求=自身が何故生を受けたのか、生きる道を探求したい
依存と執着がなぜ生まれるのか。
それは本人の生育歴の中で、「安全欲求」が満たされておらず、「承認欲求」を考える段階にまで至っていなかったと考えられます。
本人が生きてきた過程で、家庭が安心な場所でなかった場合。
安全欲求が満たされないまま、欠けた状態で大人になったのでしょう。
そのような状態で結婚しても、生育歴由来の不安は残っているため、安全欲求を相手に求めてしまうのです。
「~ために離婚しない」と考えてしまうのは、自身が生育歴で受けた不安から、脱していないからなのかもしれません。
そこから一歩踏み込んで考えてみると、「離婚した」というのは「離婚出来た」とも言えるのです。
各々が執着を手放して依存を止め、自分に嘘をつくことも止めて、離婚をして自身を尊重すること。
まず自身を尊重できれば、相手や子供も尊重しようと考えます。
そうして経済的に精神的に自立し、そんな親の元で育てられた子供は、離婚しようが安定し穏やかな心を持ち、のちに子供自身の自立も叶うでしょう。
■精神的な自立が果たせると再構築へ向かうことも
夫婦が執着と依存を手放したところ、逆に夫婦関係が改善した例もあります。
要するに、離婚するかしないかは結果論であり、自立より些細なことなのかもしれません。
自立の果てに結果離婚となるならば、それは夫婦にとっての最適解でしょう。
逆に夫婦関係が再構築に向うのならば、それも夫婦にとっての最適解です。
夫婦はどうあるべきなのか、夫婦を維持するために必要なものは何か。
夫婦を維持して犠牲になるものは何か。
自分は夫婦に何を求めているのか、まずは自身を内省するところから、じっくり始めてみる必要があるでしょう。