Scroll Top

毒親がもたらす毒から逃げる

30代男性

60代の両親とは絶縁状態

 

■毒親は死ぬまで毒親であり続ける

もう何年も親と会っていない30代男性。

親は関係を繋ぎ止めたいと連絡を試みるが、男性は全ての連絡手段をブロックしたまま。

ここに至るまでには幼少期から長年の葛藤があったそうだが、

あるきっかけから親を完全ブロックすることができた。

 

親と絶縁し関わりを持たなくなってから、ここまでの数年は、

若干の後ろめたさはあっても、比較的心穏やかな日々が続いているそう。

逆に親子関係が元通りに戻るなど、全く想像できないとまで語る。

 

発達障害(ASD)と強度の自己愛性人格障害とおぼしき父親、自己肯定感が低く依存性が強い母親。

支配欲の強い父親の毒に家族は冒された。

自分の話ばかり、興味のない話は聞かない。

子供を褒めることはせず、「褒めると調子に乗る」と平気で子供に言い放つ。

子供の能力が自分を上回ることを良しとせず、「無駄な知識と能力」として子供の自尊心を傷つける。

父親は自分のプライドが大事、そのために家族を利用する。

家族が父親の思う通りに動かないと不機嫌になり、高圧的に怒鳴ったり、何日も無視をしたり自宅に帰ってこない。

会社の経営が忙しいのを理由に家族を一切省みない、極度の仕事中毒。

その裏で絶え間なく重ねる家族への裏切り、家族にバレていることも気が付かないほど大胆な不倫。

その結果、母親はカサンドラ症候群に、子供(男性)はアダルトチルドレンという典型例に。

 

男性は一般社会に出るまで、世間の家族とは少なからずこんなものだと思っていた。

自分の家族形態の異様さに、全く気が付かなかったそうだ。

 

社会人になって初めて、慕う他人から毒親の危険性について聞かされて衝撃を受ける。

親との関係性に不安を感じるのは、自分が悪いのだと思い込んでいたため、

最初は他人の話をにわかに信じられず、完全な人間不信に陥ったのだという。

男性は鬱状態が酷くなり、勤めていた会社を退職、そのまま自宅に引きこもってしまった。

生活が荒れてしまい、親も自分も信じられなくなり、自殺まで考えたのだという。

 

そんな男性の状態を心配した恋人が懸命に寄り添ってくれ、男性の人間不信は徐々に解かれていった。

それと同時に、他人が話してくれた毒親についての認識が、自分の中でしっかりと受容出来たそうだ。

恋人が「隣から」示し続けてくれた「共感」、これが男性の頑なな自己否定を氷解させたのだろう。

なぜならば男性は、その「共感」を親からはもらった記憶がなかったからだ。

 

 

■毒親が形成する親子関係の不幸

男性が親子関係を絶縁してから数年が経過した。

両親は子に捨てられたことに激怒していたが、最近になって息子のSNSにアクセスを試みようとしている。

その理由は、息子がネット界隈で名が知れるようになったからだ。

プライドが全ての父親にとって、名が知れた息子は自慢の種なのだろう。

実際、名が知れるようになるまでは、捨てられた息子を恨みはしても、興味を示すことはなかったのが実に毒親らしい。

 

最近になって「祖母が危篤だ」とメールが来たそうだが、そのメールには男性を思いやる言葉は記されておらず、

危篤だから会いに来い、葬式に出てこいという勝手な都合のみ書かれてあったとのこと。

父親にとって息子は、自分の都合の良い「修飾物」でしかないのだ。

息子から捨てられた事実に、プライドを傷つけられたことが耐えられなかったのだろう。

 

また不幸なことに、そもそも毒親は自分を内省するという思考が欠落しており、

また、プライドを傷付けられることは徹底的に避けるため、

「上手くいかないこと」は全て他責であり、周りの問題だと認識してしまう。

 

そのためこの親は、息子(男性)が絶縁した理由は男性自身にあり、

そう思わせた男性の周り(恋人)に問題があると思い込んでいるのだ。

ここまでになると、親子関係は双方にとって不幸でしかなく、親子が親子である必要性すら問われる問題となる。

 

 

■毒親を大切にしなくていい

性善説で考えがちな良心のある人ほど、理不尽な扱いを受けた時でも「その理由」を考えてしまう。

特に親からされた理不尽な言動を、子供は「自分のせい」だと思って傷ついてしまうことが多い。

 

自己愛性人格障害の毒親は、家族を自分の修飾物としか捉えていないため、

子供が親にいくら共感を訴えたところで、他人軸がない彼らには全く響かない。

人の生まれ持った性質や後天的に培われた性格は一生変わらない。

ゆえに毒親は一生毒親であり、毒だと感じているのであれば被害者は離れるより他の方法はない。

 

一般的に毒親は「外ではいい人」であることが多く、社会的には成功した人が多い。

その裏で近しい人間や家族には、その本性をむき出しにする「内では加害者」であることが多いという二面性を持つ。

 

そのため子供は「外での評価と内での実感」という、親の二面ギャップに苦しみ続け、

結果「自分が悪いからいけないのだ」と思い込むネガティブスパイラルに陥ってしまうのだ。

 

最終的に毒親にとって加害先は「家族」しかなくなるため、毒を認識した時点で絶縁し逃げるのは極めて正しい。

毒になる人間を大切にする必要はなく、自分を大切にしてくれる人間を大切にすることである。

 

毒親の原因は毒親自身にあり、モラハラの原因も全て毒親にある。

被害者である家族は、まず自分の問題ではないことを認識し、早々に親子関係を断ち切ること。

親だからと世間一般の括りから大切にしなければならない、という画一的な見方からは離れてみよう。

人間は親子であっても夫婦であっても「個」であるのだから、まず自分自身を大切にすることを忘れてはならない。

まず自分を大切に考えられなければ、周りを大切に出来るはずはないのだから。