■ご相談
夫とセックスしたくない
決して夫が嫌いな訳ではありません。
平日は、お互いに今日の出来事を話しながら、夕飯を食べています。
休日には一緒に家事をして、家族そろって買い物へ出かけますし、夜は毎日同じベッドで寝ています。
世間から見たら、とても仲が良く、問題のない夫婦のように見えると思います。
死が二人を分かつまで、一緒に人生を生き続けて、一番信頼出来て、
一番愛している人、それが夫なのだと思っています。
それなのに、セックスだけはどうしてもしたくない。
子供が生まれて、産後のセックスレス期から始まって、
家族としての絆を感じるようになった頃から、いつの間にかセックスが嫌いになってしまいました。
夫はセックスを求めてきますが、どうしても精神的に受け入れられずに、セックスを拒んでしまいます。
受け入れなきゃ、寛容にならなくちゃと自分に言い聞かせるのですが、どうしても拒否を自制できません。
前は、それでも我慢して、夫の求めに応じたこともありました。
しかし、全然良いものではなかったし、逆に生理的に嫌悪感をもってしまい、
ますますセックスが嫌になってしまいました。
夫はもう諦めている感じですが、以前とは確実に関係性が変わってしまったと感じています。
完全なセックスレスになるまえは、夫からの愛情表現が多くありましたし、
私のことが好きな気持ちを感じたし、夫婦として安心感がありました。
しかし今、夫は責任だけで一緒にいるのだと感じるし、表面上は平穏ですが、
心を許してくれてはいないと感じます。
怖くて見て見ぬふりをしていますが、夫は風俗だけでなく、外で不倫をしている痕跡があります。
それでも夫は家庭をおろそかにしていませんし、私とも仲良くしてくれています。
そもそも、私がセックスを拒否したことで外へ向かったと思うので、
夫に申し訳なくて事実を追求できません。
片目をつぶって見るくらいがちょうど良いのだと、自分に言い聞かせてはいますが、
いつか家庭が壊れてしまうかもしれないという不安はずっと持っています。
しかしそれも、私が夫とのセックスを拒否したのが原因なので、
これから先、自分でもどうしたらいいのかが分かりません。
本当は、昔のようにスキンシップやセックスを愉しめたらいいのにと思いますし、
心から愛し合いたいと思うのです。
そう頭では思っていても、身体はいつも逆の反応になってしまい、
夫には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
そのうち夫から、離婚を言い渡されるのではないかと考えると、夜も眠れなくなってしまいます。
■回答
セックス・夫婦それぞれの意義
妻が夫とセックスしたくなくなった原因と、その対処法をお話ししていきます。
結婚してからセックスの回数が減ったり、
完全なレスになってしまった夫婦は、かなり多いと感じています。
統計によると、三十代~四十代の夫婦で、約6割がセックスレスであり、
残りの4割のうち、月に1回以上セックスをする夫婦は、実に5割にも満たないそうです。
しかも妻側から「セックスしたくない」と、夫の誘いを断るケースが大半だという数字が出ていました。
例え、セックスがなくなってしまっても、夫婦であり続けることは出来ます。
お互いに仕事をこなし、協力して家事をこなし、
子供の成長を見守る大切な役割を果たせていれば、一般的には円満な家庭と言えるでしょう。
しかしその裏で、お互いの心は、少しずつ確実に離れていってしまいます。
どちらかがセックスをしたいのに、どちらかがそれを拒んでしまっている状態ならば尚更です。
妻も夫に罪悪感を持ちつつも、生理的に拒絶してしまう苦しさに、悩み苦しんでいることが分かります。
★妻が夫を拒む原因その1
「交際当初からセックスに無理を感じていた」
女性にとってのセックスとは、快感を得るためのものではなく、
安心感や愛されているという実感を得るために行われることが多いです。
ところが、男性の場合はそれとは正反対なのです。
まず、自分の性欲を満たしたいという気持ちが強く、次いで征服したい気持ちがあるのが男性の本能です。
女性の立場に立ち、自分とのセックスで、
相手が身も心も満足したかどうかという考えには、至らないことが多いです。
「セックスとは男性の射精を以て終わる」これは男性が持って生まれた本能と言えるでしょう。
交際当初は、女性も愛情や気持ちが盛り上がるため、
セックスに対しても積極的になりますし、それを受け止める自分に酔いしれもします。
夫のセックスが、自分にとって良いものではない場合でも、
自分が「愛されている」という実感だけで、セックスを感じることができるのです。
行為そのもので感じているのではなく、愛されている自分という思いから、脳で感じているのです。
「夫のセックスは気持ちがいい」と、頭で思い込んでいると言っても過言ではありません。
しかし、一緒にいる時間が長くなるにつれて、
愛情は鮮やかな赤から、深みのある朱色へと変化していきます。
高すぎた熱は体温程度にまで下がり、夫との愛の世界から、
安定的に家庭を守る家庭人へと、愛情が安心へと変化していきます。
その変化に合わせるようにして、セックスに思い込みや無理を重ねてきた妻は、
セックスに拒否反応を見せるようになります。
ここまででもうお分かりでしょうか。
元々ふたりは、交際当初から、セックスの相性自体良くなかったのです。
心でセックスを感じていると思い込んで、カモフラージュされてきた真の体の相性が、
時間をかけて表面化したと言えるでしょう。
次いで子供が生まれ、夫婦の関心が子供へ移っていき、
多忙などで体力が落ちていくと、夫をセックスの対象として見ることができなくなっていきます。
夫婦の悲しいすれ違いですが、これがセックスレスの実体だと考えています。
★妻が夫を拒む原因その2
「出産を機にセックスレスへ」
出産を機に、セックスレスに陥る夫婦も非常に多いです。
子供が近くにいる部屋でセックスするのは、落ち着きませんし、嫌悪感も湧いてくるものです。
セックスによって子供を授かったのにも関わらず、母性がセックスを否定するのでしょう。
一見、矛盾しているようにもみえますが、母親ならば誰しも納得のいく感情です。
逆に、夫側も同じ気持ちになることがあります。
立ち合い出産などで、妻の産みの苦しみを目の当たりにして以来、妻を女性と思えなくなってしまった。
これもよく聞かれる、セックスレスの原因です。
また、母乳を与えている妻の姿を見ると、
「妻」ではなく「母」なのだと感じ、妻に対して性欲が湧かなくなるのです。
男性の心は、その雄々しい外見とは異なり、非常に繊細でデリケートに出来ています。
これをもって、セックスレスを責めてしまうのは、気の毒かもしれません。
家庭の中心に子供が存在するのは、夫婦にとって、とても素晴らしいことでしょう。
しかし、セックスレスで心の距離が開いてしまった場合、
子供が独立したあとに残された夫婦が、先行きに不安を感じてしまうのも仕方ありません。
一般的に、女性は愛を、身体だけではなく、心で求めて感じるものと言われています。
ギュッと抱きしめられたい、キスをして欲しい、手を握って欲しい。
これらは全て、相手に愛情を求めているが故の欲求です。
しかし日頃から、無頓着に扱われている場合、夜だけ都合よく、
夫の性欲のはけ口になるなんて、とても耐えられないと感じてしまうのも無理はありません。
愛する人から、心で愛されなくなった孤独と悲しみ。
夫婦として修復が可能なうちに、
正面から向き合って問題を解決する姿勢を作る努力をしてみませんか?
■セックスレス解消には順序が大切
セックスレスに陥ったり、セックスが上手くいかなくなった場合、
求めるほうは無理強いをしがちになりますし、したくないほうは罪悪感をもってしまうものです。
そうしてセックスにネガティブな思いが積み重なっていき、自らセックスを遠ざけてしまいます。
「しなくちゃいけない」という思いが、
余計なプレッシャーになってストレスになり、セックスを遠ざける要因になります。
もちろん、子供を作るためにはセックスが必要で、
夫婦にとっては避けて通れない問題であることは確かです。
しかし、必ずしも「なくてはならない」ものではありませんから、
気持ちが高まって合意できたらしたらよいと、自分の気持ちに余裕を作ってあげることが大切です。
子供を作る手段は幸いにして、現在の医療が様々な方法を与えてくれています。
決してセックスだけが、子供を得る手段ではありません。
「したくない」自分を許し、ハンドルに遊びを与えてあげて、
まずは自分の素直な気持ちを尊重してみてください。
そして、自分はこういう理由でセックスに望めないのだという本心を、
恐れず夫に伝えてあげてください。
何が原因か分からないために、拒否された夫は意味も分からず、
ただ自信を喪失してしまいますから、安心を求めて外へ向かってしまうのかもしれません。
セックス自体が合わないのならば、素直にその旨を伝え合い、
二人のオリジナルのセックスを作ってみることも一つですし、
セックス以外の愛情交歓を見つけることも一つです。
夫が、希望するセックススタイルを譲らず、
妻がそれをどうしても受け入れられないと感じるのであれば、
外でするセックスを許可してあげることも、解決策のひとつかもしれません。
セックスが出来ない罪悪感で、居心地が悪くなってしまうくらいなら、
夫の欲求を晴らす手段を認めてあげる方が、お互いの心に無理がかからないと思いませんか?
但し、そこはお互いにルールを敷いて、それを順守することは非常に大切です。
それが、お互いの人権を尊重するということですし、尊重なき関係から、安心や信頼は生まれません。
そうして、お互いや自分を、一般的な常識や固定概念で縛らず、
自分たち夫婦のオリジナルの在り方を模索してみること。
一般的な「こうあるべき」から「こうしてもいいよね」に変えていくだけで、
その途端、二人の間に穏やかな風が吹くようになることでしょう。
そうして、お互いを尊重していく先に、
再びセックスが復活するきっかけが待っている、かもしれません。
そのときはお互い素直になり、決して無理をせず、
ゆっくりお互いを感じることができるように、お互い配慮してみましょう。
何事においても、順序や適度な速度やタイミングは、とても大切なことだと考えています。