カウンセラーコラム#11
■ASD(自閉症スペクトラム障害)とは
親しくなる前は目立った違和感が感じられなかったのに、
親しくなればなるほど相手とのコミュニケーションに違和感が増していく。
違和感で済んでいるうちはいいのだけれど、違和感はそのうち嫌悪感に変わっていった。
そう感じてしまう私は心が狭いのでしょうか?
それとも私が相手をそうさせてしまっているの??
当サロンでお受けしているご相談の実に7割が、タイトルに挙げた問題を内包していると感じています。
一般的に発達障害は三つの傾向に分けられます。
・ASD(自閉症スペクトラム障害)
・ADHD(注意欠陥多動性障害)
・AD(学習障害)
これらの傾向は必ずどれかひとつに当てはまるというものではなく、
それぞれの傾向を併せ持っていたり、傾向の強弱があったりすることがあります。
以下でそれぞれの特徴を紹介しますが、ADはここでの解説を割愛します。
●自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症の中心となる傾向は主に、
「社会コミュニケーション障害」「限定的な反復行動」の二つです。
社会コミュニケーション障害とは、
日常会話や定型的な挨拶など、とりとめのない会話のキャッチボールが出来ないことを指します。
感情を表したり、愛着を示す言動をとることはほぼありません。
また、感情表現豊かな人を苦手とし、会話の際に表情の変化が乏しかったりする点も特徴的です。
周りの空気が読めないため雰囲気を壊す発言をすることが多く、人との関係を円滑に築くことが困難です。
思考に柔軟性がなく、同じ話を繰り返したりする点も特徴です。
●注意欠陥多動性障害(ADHD)
注意欠如多動性障害(ADHD)は、不注意・多動性・衝動性の三つの特徴があります。
不注意とは、集中力が長く続かないため、物事への注意がおろそかになってしまうということです。
・ケアレスミスが多い
・気が散りやすく一つの物事に集中できない
・自分が興味を持つことは積極的に取り組めるが、時を忘れて取り組むなど過集中し過ぎてしまう
・物の置き忘れや無くし物が四六時中
・片付けや整理整頓ができない
・自分でした約束を自分の都合で断りもなく平気で反故にし、そこに良心の呵責を持たない
注意欠如、多動性障害(ADHD)の中で多動性と衝動性の傾向が強い人は以下の特徴がみられます。
・物事の優先順位が分からないことがある
・落ち着いてじっと座っているなどのことが苦手
・衝動的な発言や行動をすることがある
ただ前述した傾向は、その多動性・衝動性が「優れた活動性」「優れた決断力や発想力」として、
社会ではその突出した能力に高い評価を受けることもあります。
注意欠陥多動性障害は、一概に劣るものとして扱ってはなりません。
■発達障害者には独特の会話がある
今回は特によく見られる傾向を以下に取り上げていきます。
●言葉のチョイスが特徴的
自閉スペクトラム症の人は、会話時にその言葉のチョイスが特徴的です。
日常会話やとりとめのない会話の際でも、難しい単語や難解な言い回しなど、
その会話に合わないような印象を受けることが多くあります。
これはなぜこのような傾向になるかというと、会話を人とのコミュニケーションから学ぶのではなく、
本やテレビなど、非コミュニケーションから会話を学ぶからではないかと考えられています。
コミュニケーションが上手くいかないため、非コミュニケーションを好むという特徴があります。
●会話中のジェスチャーが独特
自閉スペクトラム症の人は、非言語性コミュニケーション(ジェスチャーや表情や視線など)を苦手とします。
感情を出したり相手の感情を読むことが出来ないため、言語以外でのやり取りは避ける傾向にあります。
そのため妙に無表情で淡々と話したり、感情が出ないためロボットと話しているように感じるでしょう。
そのせいで相手に変な印象を持たれるということもあります。
その逆でジェスチャーが妙にオーバーであるということもあります。
●物事をはっきり言い過ぎる
自閉スペクトラム症の人は、あいまいな表現やグレーな考えを理解出来ず、
どんな場面でも思ったことをそのまま口にしてしまうため、
相手を怒らせてしまったり不快に感じさせることが多々あります。
正直すぎる人、あるいは攻撃的な人、失礼な人という印象を持たれることも多いでしょう。
そもそも自閉スペクトラム症の人は、相手の気持ちや感情を想像することが苦手です。
自分の世界が正義、という正義感を持つため、物事を白黒ハッキリ付けたがる傾向にあるのです。
相手のあいまいな表現や八方美人な態度を嫌います。
また、これを言ったら相手がどう思うかという、相手の気持ちを汲み取る能力が圧倒的に欠如しています。
●自分が興味を持つ話だけ一方的に話す
自閉スペクトラム症の人は普段無口であることが多いのですが、
自分が興味を持つ話題になると突然多弁になり、その話が途切れることはありません。
特定の分野に関心が限定していて、一方的な話に相手が退屈していても気が付けないのです。
逆に興味のない話題に対しては黙り込んだり、相手の話を全く聞かないことさえあります。
自分がよく分からない話題については、何を話したらよいのかが分からないのです。
井戸端会議や日常会話などの雑談は全く出来ないため、それらを徹底して避けることが多いです。
●思ったことをすぐ口に出す、相手の話を遮る
注意欠陥多動性障害者が持つ「衝動性」が影響しています。
様々な知識や考えが泉のように湧いてくるため、忘れてしまう前に話しておきたくなるのです。
思いついたことは話さなければ気が済まないため、躊躇なく口に出すわけです。
また、相手の話を途中で遮って、自分の話に持ち込むことが多くあります。
本人は言いたいことを言いたいだけなので、相手の気分を不快にさせているという視点がありません。
●人の話を聞いていない
注意欠陥多動性障害者は、興味のない話題や一つのことに集中することが苦手です。
そのため、相手の話へ相槌を打ったり、会話のキャッチボールができません。
相手が耐えかねて「話を聞いてる?」「何考えていたの?」と話しても、
それが相手からの不快なサインとは感じ取れないのです。
●失礼な物言いを平気でしてしまう
これを聞いたら相手がどう思う、という相手の気持ちへの想像力が欠如しているため、
思いついたことを深く考えずに発言して相手を怒らせることがよくあります。
そこに相手を傷付けたいという意図は全くないのですが、
余りに失礼な物言いに、相手からおかしな人というレッテルを貼られてしまいがちです。
■特性を正しく理解して上手に付き合う
以上に挙げた特徴はほんの一例ですが、発達障害にとりわけ多い特徴を挙げてみました。
コミュニケーションに難があると感じる相手には、この特徴が多く当てはまるのではないでしょうか。
ただし間違ってはいけないのは、発達障害は決して病気でも治癒するものでもないということです。
難があれば全て悪いもの、病気であるから治すべきもの、という考え方は非常に危険です。
これは「病気」ではなく「特性」であるため、治すのは困難だということをまず理解しましょう。
正しくは「自分が治したいと思えば変わることが出来る」ですが、
発達障害者は元々人とのコミュニケーションで傷ついている過去があることが多く、
プライドや自己肯定感が必要以上に傷ついていて現在があります。
そのため自分の性質に問題があるとは決して思わない・思えないのです。
このタイプの人とのコミュニケーションに悩みを抱えている人がいれば、
アドバイス出来ることはひとつだけ「我慢できなくなる前に離れること」です。
相手のために、と考えるより、自分がどんな毎日を送りたいかを念頭に置いて、
このような相手との境界線をしっかり引くことが重要です。