■ご相談「我慢しすぎて麻痺していた僕」
思い返せば、僕は小さいころから我慢ばかりしてきたと思う。
いつも親の顔色を見て、機嫌を損ねないように、怒らせないように、ビクビクしながら生きていた気がする。
親の要求に応えなければと思ってきたし、応じることが「良い子」の証だと思ってきた。
「良い子」でいることが、子供の役目だと思い込ませてきた親は、洗脳のプロなのかもしれない。
小さい頃は、親と僕の間で主従関係が成り立っていたが、僕が成長するにつれて複雑になっていく。
学校生活で世界が広がっていく僕と、
僕に対する理想がますます大きくなる親との間に、考え方の違いが生まれた。
親は、自分こそが正しいと思っているので、僕のやりたいことや気持ちを否定してくる。
親が認めない友人関係は否定されたし、僕が興味を持ったものや趣味もことごとく否定された。
勝負ごとが好きで、スポーツが好きな親は、
スポーツに打ち込んで努力する子供像を、僕に押し付けてきた。
そもそも僕はスポーツが得意ではないし、好きなことは静かに本を読むことだったのに、
僕の趣味は親によってことごとく否定された。
親が否定したのは僕だけではなく、弟の人生も否定の連続だった。
しかし弟は、僕を見ていて学習したのか、親の標的とならないよう、賢く上手く振る舞っていた。
最初、弟はずる賢いのかと思っていたが、弟はピエロを演じていただけで、
親のご機嫌を取るために自分の気持ちを犠牲にしてきたことを、後になって知ることになる。
自分だけが親の毒を飲まされてきたと思っていた僕は、
弟の心の内を知ったとき、自分を恥ずかしく思い、そして自分を責めた。
親に良い顔をして、自分の気持ちを封印してきた弟は、
社会人になってから自分が分からなくなり、自殺未遂まで起こしていたと後で知った。
僕のほうが、弟よりよほど、抑圧されていた気持ちを開放できていたのだ。
結局のところ、僕も弟も社会人になるまで、親が全てだと思い込まされてきたのに、
実はその親の考え方が普通ではなかったと知り、自分を見失ってしまったのだと思う。
そんな親との関係が限界を突破したのは、つい最近のことだった。
それまでも親の思惑を押し付けられ、受け入れると自分の意思がないと否定されたり、
その時の気分で約束したことを、気分で反故にされるということを繰り返されてきたのだが、
今回は、僕と他人を巻き込んだ形で、同じことをされたため、
自分の中で張りつめていた糸がプツンと音を立てて切れた。
このまま親と関わり続けたら、自分は完全に壊れてしまう、
そう思ったら「いい子」で居続ける自分に拒絶反応が出てしまった。
それまでの自分が酷く汚く醜いものに思えたし、人間としての存在意義がないとまで思えた。
このままでは自分で自分を滅してしまいそうで、自分自身が怖くなるまで、精神的におかしくなってしまった。
僕をここまでにしたのは父親だが、父親の化けの皮がはがれてきたこともきっかけになった。
あれほど知性や品性を口にしていた父親が、頻繁に女性と不倫をしていたことを知ったからだった。
しかも複数の女性と不倫をして、短期間で女性をとっかえひっかえしていたことも分かった。
母親はそれを昔から知りながら、自分の保身のために見て見ぬふりをしてきたことを知った。
聞けば僕が幼いころから、父親はまるで依存症のように不倫を繰り返していたそうだ。
ならばどうして離婚をしなかったのかと聞いたら、一人になるのが怖かった、
人から後ろ指を指されるのは避けたかったと語った母親。
そのとき分かった、母親も子供の心より、自分のメンツが一番だったのだと。
そんな自分本位な母親に、僕は同情心などみじんも感じなかった。
ギリギリで耐えてきた僕の心が、音を立てて壊れていった瞬間だった。
僕は、一体何のために生まれてきたのだろうか?
その答えは今なら分かるし単純明快だ、親のメンツとエゴのためだけに生まれてきたのだろう。
僕と弟は色々話し合って、これまでのことを確認し合い、結果、親を捨てることに決めた。
近年、毒親という言葉が一般的になり、親の存在で長年苦しめられ、
自己肯定感が持てなくて、生き方に苦しんでいる人の話を聞ける世の中になったことが背中を押した。
僕と弟は、示し合わせて一斉に、親との連絡手段を絶った。
僕は親に、自分の思いを記した最後の手紙を送ったが、
弟は何の言葉も兆候もなしに、いきなり全ての連絡手段を絶ち切った。
僕より弟の方が、よほど親への恨みが強かったのだろう、
僕の方が、最後まで親に認められたいという思いがあったのだと思う。
親は案の定大騒ぎになり、自宅に手紙を送りつけてきたり、SNSを辿って連絡を取ろうとしてきた。
しかし面白いことに、職場や自宅に押し掛けてくることは無かった。
その理由は分かっている、そんな姿を見られたらメンツが立たないし、
あくまで子供のほうから頭を下げさせたいからだ。
手紙やSNSを無視していると、今度は親戚を使って連絡を取ろうとしてきた。
連絡してきた理由は「祖母の具合が悪いから見舞いに来い」だった。
ずっとそうだったが、僕たちの気持ちには触れようとも、考えようともしていないことがよく分かった。
それも無視して、しばらく経ったころ「祖母の葬式に来い」と連絡が来た。
僕も弟もさすがに心が痛んだが、絶縁を決めた以上、
ここで戻ったら、また支配をされてしまうのは分かりきっているので、
心を鬼にして自分の気持ちを優先して無視した。
連絡を仲介した親戚は「親を捨てるなんて子供のやることではない」
「子供なら親に感謝して最後の面倒まで看るべき」と僕らを頭ごなしに批判した。
僕は思う。親の勝手で僕らを産んだのに、
親のメンツやプライドのために子供の気持ちを蔑ろにして、僕は何度も心を傷つけられたのに、
それでも僕らは親のために、自分を殺しながら生きなければならないのだろうか?
どんな親であっても、子供は親のために、様々なことを耐えて我慢して、
親と最後まで関わっていかなければならないのだろうか?
僕は、何が良いのか悪いのか分からなくなってしまったし、毎日が苦しくてたまりません。
■回答「親を捨てることは悪いことじゃない」
結論から申し上げますと、あなたはあなた自身のものであり、
自分を犠牲にする必要はなく、あなたを差し置いて誰かを優先する必要はありません。
そして、あなたを無用に傷つけたり、蔑ろにしたり、
大切にしてくれない人と、関わり続ける必要もありません。
もっとも大切なことは、自分を誰よりも一番に大切にすることであり、
そもそも自分のために生きられない人は、他の誰をも幸せにできないでしょう。
DVやモラハラなどの問題は人権を侵害する行為であり、
これらを当たり前のようにやってくる人間に対して、
我慢や譲歩をする必要がなく、答えは明確に「物理的距離を取る」の一択です。
そこに罪悪感を持てないということは、そもそも人間性に大きな問題があるからであり、
染み付いた人間性はそう簡単に改まるはずがありません。
ここを間違えてしまうと、あなたの人生は遅かれ早かれ行き詰ってしまうでしょう。
ですから、自分を殺して我慢をする必要はありませんから、
タイミングを見て、親と完全に決別するのは間違えていません。
子供にとって毒にしかならない親は、勇気を出して自分のために思い切って捨ててください。
物理的な距離を置くことが、あなたの人生を守ることに繋がる、唯一無二の方法です。
そもそも親子問題は、家庭という閉鎖的な空間で生じてしまうため、その解決が非常に難しいといえます。
外部の人間から見ると、理想的な家族に見えていることが多いのですが、
子供にとっては地獄のような親子関係であるケースが多々あります。
また、毒親との異常な関係を訴える子供を、外部の人間は信じてくれないどころか
「親を悪く言うあなたのほうがおかしい」と、更に傷をえぐるような言葉を投げかけてくることがあり、
子供は自分の苦しみは誰にも理解されないと、絶望から口を閉ざしてしまうという現実があります。
あなたには、親を捨てることで感じる罪悪感を吐き出して、
そのことについて語り、自分を受け入れてこれまでの自分を許し、
少しずつ心を回復させていってほしいと願っています。
これまで散々傷付いてきたあなただからこそ、辛かった経験を活かして周りの人に影響を与え、
素晴らしい教養に変えられると信じています。
そのためには、あなたを深く傷つける親から、
自分を守るために下した絶縁という決断について、誇りを持てるようになることがとても重要です。
もしも今後、親との間にどんなことが起きようとも、
あなたの人生を取り戻すために決断したことは、しっかりと守り抜いてください。