■人はなぜ人を妬んだり僻んだりするのか?
「妬み」「ひがみ」という言葉があります。
相手が元々持っているものや後の成功など、自分より秀でた部分を見比べて劣っている点を自覚し、
悔しい気持ちを相手への恨みに転化して、相手に嫌がらせしてしまう心理を総称します。
自分と見比べて自身が内包する劣等感が刺激され、必要以上に相手を妬んでしまい、
果てには憎悪をも抱いてしまうことがあります。
実はこの心理はどの人間の心の奥に必ずあるものですが、その人の持つ自己肯定感の強弱によって、
精神面に与える影響はかなり異なってきます。
時には人間の運命を支配しかねない、大きな問題に発展してしまうこともあるでしょう。
人の影響を受けやすい人が、人の何かしらの成功や実績を見聞きしてしまうと、
「何であの人だけが幸せになるの?」
「何故自分は幸せになれないの?」と、心中穏やかではなくなってしまいます。
表向きでは 「素晴らしい」 と褒めたたえながらも、裏では 「あの人ばかりズルい」 と、
人を妬んでしまうことがありませんか?
■全体主義という日本特有の珍妙な文化
そもそも日本人は人に対して、妬み僻みを感じるタイプの人が多いように感じます。
その理由を紐解いてみると、つい他人軸を重んじてしまう日本人特有の意識が、
全体主義の偏りに拍車を掛けていて、心理に影響を及ぼしていると考えられます。
要は他人が自分より優れていて、抜きん出たものを持っていると分かると、
足を引っ張って自分と同じレベルに落とすことで、ホッと安心できるという心理があるのです。
よって特に優れた才能や財を持つ人間や、急に名を挙げた人などは特に、とかくバッシングされる対象になりがちです。
「出る杭は打たれる」という諺がありますが、これも妬みの心境が引き起こす、
日本人特有な考え方と言えるでしょう。
このようなタイプの人は財や才能がある人間が、社会的成功を収めるのを良しとせず、
そのうち失敗を重ねて没落していく様を、高みから眺めることに快楽を覚えています。
昔を振り返ると平家物語のテーマがそれに当たります。
平家物語は天下を手中に収めた平清盛と、その一族の没落が宗教的な厭世観で表現されていますが、
調子に乗るとああいう様になる」という、妬みの心理が書かれているようにも思えます。
その時代からずっと日本人の中に顕在化していた、日本特有の珍妙な心理なのかもしれません。
■妬みの原動力になっているものを知ること
常に妬みやひがみを感じてしまう人の内側には、コンプレックスが影響しているとみて間違いないでしょう。
それは自己肯定感の低さと比例しています。
異才を持つ者が別天地に行ってしまい妬んでいたが、失敗し再び自分がいる世界に戻ってきたことで、
やはり自分と同じなのだと知り安心感を得ます。
失敗者に妙に優しくなるのはその心理が影響しています。
自分の位置がとりわけ低いわけではなかったのだと、ただ自分のポジションに安心感を得たいがための
歪んだ心理だと思われます。
妬み・ひがみという心理を好む人はいないと思います。
一般的には負の感情と捉えられていますし、そんな感情を持つ自分を内心では軽蔑しています。
そのため表向きには、「人の成功など別に興味を持っていない」かのように振る舞ったりしますし、
心の中にある妬みやひがみの心理を、内心では懸命に押し殺しています。
近くで見聞きしていると嫉妬心で苦しくなるため、嫉妬心を感じさせる人から距離を置いたりして自制しています。
人のことを嫌だと思う心理を分析してみると、そこにはいつも妬み・ひがみの心理が渦巻いていると、
気が付くこともあるのではないでしょうか。
一般的には負の感情なだけに、自分はそんな考えはないと思い込もうとしますが、
実は負の感情は抑圧すればするほど、強化される方向へ向かってしまうものなのです。
負の感情を持つことは、人間ならば誰しも経験があると思います。
そのこと自体に嫌悪したり恥じ入ることはありません。
人生において良いことも悪いことも、自分の素直な感情なのだと受容すること。
負の感情を自己分析し正しく理解して認めること。
そして最も大切なことは、自分の欲求は周りに左右されずに大事にし、決して周囲との同調ではなく、
独自に手に入れる努力をし続けることです。
「あの人って、僻みっぽいよね」などと、使われがちな「僻み」ですが、
その特徴は自信がなさの裏返しが、「僻み」 として現れているように感じます。
それでは僻む人とは具体的にどのような人なのでしょうか?
僻みの気持ちを持つ人の特徴を次に紐解いてみましょう。
■自尊心が低い
自分は他人よりも劣っている、人よりレベルが低いと、
自分に自信が持てない感情を抱える、自尊心の低い人は僻みっぽい人の最たる特徴です。
いつも他人と自分を見比べていて、自ら自己評価を下げていると同時に、
他人をうらやましく思うあまり、悔しさなどの負の感情が表に出てしまいがちです。
低い自己評価が僻みっぽい性格にさせるのでしょう。
僻む人が自分と比較して他人が優秀なことを知ると、その事実を素直に受け入れられず、
怒りや憎しみに囚われてしまいがちです。
こうした性格の持ち主は他人を褒めることができません。
自分よりも他人が優秀だと知ると、相手をけなして貶めようという気持ちが生まれるので、
相手を称賛することはありません。
とかくそのような人は、他人が周りから褒められるのを見ることすら嫌います。
自分よりもできると思った瞬間に嫉妬心が沸いてきます。
誰かを認めて称賛することは、自身の劣等感を募らせることに繋がるのです。
■他人の悪口を言う
嫉妬心が強いと特定の人物を貶めたくなり、悪口に走るのは当然の行動なのかもしれません。
自分の他人への嫉妬心を抑えられるならば、僻んだり妬んだりする傾向はまだ強くないと思われます。
しかし本人に直接悪態をつく人は、妬みや僻みの傾向が強い性格で間違いありません。
悪口を本人のいないところで言ったとしても同様です。
本人が居なければ自分の独壇場ですから、本人に否定されることなく悪口を言えて、
自尊心も保たれるため優越感に浸ることができます。
■現実離れした欲求
本来の自分の姿を直視できず、ああなりたい・こうしたいなどの理想ばかりで、
実際の行動が伴わない人も僻む人と言えるでしょう。
いつも何かを欲しがる欲求ばかりで、それに見合う行動を起こさないので、
いつまでも欲求が満たされないまま見栄を張っています。
このような人はとかく他人と自分を比べたがり、相手の長所は受け入れられないので、
負け惜しみの気持ちが僻みとなって発現します。
■計算高く見える行動
僻む人の特徴として計算高いことも上げられるでしょう。
僻む人は他人と比較して自分の評価が高いことを望みます。
それに自分だけが得したいという気持ちがあるので、周りの都合に合わせて良い子を演じたり弱気になったりと、
相手に合わせて周りから好かれるように振舞います。
こうした行動は端から見ると計算高く見えるでしょう。
■僻みっぽい人に性別は関係ある?
一般的に女性の方が僻みっぽいと言われますが、実は性別は全く関係ありません。
男性よりも女性のほうが僻みっぽいと思われる理由は、人との比較で一喜一憂するエピソードが、
とかく女性に多く聞かれるからでしょうか。